「おい、イシェ！あの石碑、どうだ？何か書いとるぞ！」
ラーンが興奮気味に叫ぶ。イシェは眉間にしわを寄せながら、石碑の表面を慎重に観察した。
「ただの紋様みたいじゃないか。ラーン、また大穴を見つけたと思ったら大騒ぎするから困るよ」
「でも、この模様、どこかで見たことある気がするんだ…ああ、思い出した！あの古い書物にあったな！」
ラーンの目は輝き始めた。「あの書物には、遺跡の地図が載ってたはずだ。もしかしたら、ここが何か重要な場所なのかもしれないぞ！」
イシェはため息をついた。「また妄想が始まった…」
しかし、イシェも内心ではわずかに期待を寄せていた。ラーンには計画性がないものの、直感で遺跡の隠れた真実を見抜く才能があったからだ。
その時、背後から冷めた声が響き渡った。「何をしているのか、お二人とも。無駄な時間を過ごしているようだが」
テルヘルが鋭い視線で二人を睨みつける。ラーンの興奮は一転して萎んだ。
「あ、テルヘルさん。これは…」
ラーンが stammering しながら説明しようとすると、テルヘルは手を挙げた。
「私は結果しか求めない。石碑の謎解きは後で十分だ。まずは遺跡の中に入ろう」
テルヘルは凛とした態度で先導し始めた。イシェはラーンの視線を感じ取り、小さく頷いた。二人は互いに言葉を交わさなかったが、何とも言えない信頼関係を共有していた。
遺跡内部は暗く湿っていた。テルヘルは懐中電灯の光を当てながら、慎重に道を進んだ。ラーンは興奮を抑えきれない様子で、周囲をくまなく探していた。イシェは二人の様子を冷静に観察しながら、常に警戒心を怠らなかった。
「ここだ」
テルヘルが突然足を止めた。目の前には、巨大な石の扉があった。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈動しているようだった。
「これは…！」
ラーンの声が震えた。「何か重要なものがあるに違いない！」
テルヘルは冷静な表情で言った。「扉を開けるには、特定の順序で石碑に触れる必要がある。イシェ、あなたの知識を活かす時だ」
イシェは緊張した面持ちで石碑を観察し始めた。彼女の視線は冷徹で鋭く、まるで宝石を見極める宝石商のようだった。
「あの模様…！」
イシェは突然声を上げた。「この石碑の配置と扉の模様には共通点がある！もし私の推測が正しいならば…」
彼女はゆっくりと石碑に手を伸ばし、特定の順番で触れた。すると、扉から鈍い音が響き渡り、 slowly 動き始めた。
「成功した…！」
ラーンの顔に安堵の色が広がった。イシェは小さく頷き、テルヘルは鋭い目を光らせた。三人は互いに言葉にすることなく、共通の目標に向かって歩みを進めていた。
扉が開かれた瞬間、そこは息を呑むような光景が広がっていた…。