ラーンが石を蹴飛ばすと、かすかな音がビレーの街並みに溶けていった。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また遺跡探さないと生活費も足りないって、いつも同じことじゃないか」
「だってな、いつか大穴が見つかるかもしれないだろ！あの時みたいにね」ラーンは目を輝かせた。イシェは苦笑した。あの時は確かに大きな宝を見つけたが、その後、すぐにヴォルダン軍に襲撃され、ほとんどを奪われてしまったのだ。
「今回はテルヘルが頼んできた遺跡が違うんだろ？何か特別な情報でもあったのか？」
「そうみたいだ」ラーンはテルヘルの言葉を思い出した。「あの遺跡の近くで磁場の異常が観測されたらしい。何か強力な遺物がある可能性が高いってさ」
イシェは眉をひそめた。「磁場か…」。彼女は最近、ヴォルダンが遺跡から何か特殊な金属を採取しているという噂を耳にしていた。その金属と磁場は関係があるのだろうか？
ビレーの街を出発して数日後、彼らは広大な遺跡へとたどり着いた。荒れ果てた石造りの建物群は、まるで巨大な迷宮のようだった。「ここが磁場異常の発生源らしい」テルヘルが地図を広げると、イシェは奇妙な模様に気が付いた。それはまるで、古代文字のような複雑な記号で構成されていた。
「これは…？」イシェは指を動かしたが、テルヘルは無視した。「この遺跡には危険がある可能性もある。気を引き締めて」
彼らは遺跡内部へと足を踏み入れた。薄暗い通路を進んでいくと、空気が重く、不気味な静寂に包まれていた。ラーンが石柱に手を当てると、突然体が震え始めた。「なんだこれは！」
イシェはラーンの様子を注視すると、彼の体から微弱な光が放たれていることに気づいた。まるで磁場と共鳴しているようだ。「ラーン、何か変だぞ！」
その時、通路の奥から不気味な音が響き渡った。それは金属的な音で、まるで巨大な歯車が回転するような音だった。イシェは背筋を凍らせた。これはヴォルダンが噂していた特殊な金属と関係があるのかもしれない。
「何かがいる！」ラーンの剣が光り始めた。彼らは未知の危険に立ち向かう準備をした。だが、その瞬間、通路の壁から強い磁場が発生し、3人は地面に叩きつけられた。イシェは意識を朦朧としながら、テルヘルの冷たい視線を感じた。「始まったな…」。