「おい、イシェ、今日はいい感じの場所見つけたぞ!」
ラーンの声がビレーの薄暗い酒場で響き渡った。イシェは眉をひそめて、ラーンの肩越しに見える酒場の一角を見つめた。そこには、いつも通り、ラーンが目を輝かせて話しかけている相手がいる。黒髪の女性、テルヘルだ。彼女は冷酷な美しさと鋭い眼光を持つ。
「また遺跡か…。」イシェはため息をついた。ラーンの遺跡探しの熱意は理解している。しかし、いつも同じ結果を繰り返すことに疲れを感じていた。大穴を見つけるという夢に囚われ、借金が膨らみ、ついに家も手放してしまったのだ。
「今回は違うって!テルヘルが言うんだぞ!古代の王墓らしいんだって!」ラーンの興奮した声にイシェは苦笑する。テルヘルの言葉にはいつも信憑性があるように思えてしまう。しかし、その裏には何か別の目的が隠されているような気がしないでもない。
「よし、わかった。行くよ。」イシェは立ち上がった。ラーンが喜ぶ顔を見れば、自分もどこか嬉しくなる。それに、テルヘルが言うように、今回は違うかもしれない。
遺跡の入り口で、三人は準備を整えた。ラーンの粗雑な剣とイシェの繊細なナイフ、そしてテルヘルの鋭い短剣。それぞれ武器を手にし、遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は暗く湿り気があり、不気味な雰囲気に包まれている。壁には古代文字が刻まれており、イシェは興味津々に読み解こうとする。ラーンは、いつも通り、無計画に進んでいく。テルヘルは二人を見下ろすように歩き、時折何かを呟いているようだった。
「ここだ!」ラーンの声が響き渡る。奥の部屋には、黄金で飾られた棺が置かれている。
「大穴か…。」イシェは目を丸くした。
しかし、その瞬間、棺から黒い影が立ち上がり、三人に襲いかかってきた。それは undead 、古代の王を守るために作られた守護者だった。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣は undead の体を切り裂き、イシェのナイフは弱点に突き刺さる。テルヘルは冷酷な表情で魔法を操り、undead を封じ込める。
苦難の末、三人は undead を倒すことに成功した。しかし、勝利の喜びも束の間、棺を開けてみるとそこには何も入っていなかった。
「嘘…。」ラーンはがっかりした様子で呟いた。イシェも肩を落とした。
「これは…」テルヘルは棺の中に残された小さなメモを見つめていた。「これはヴォルダンが仕込んだ罠だ。」
三人は遺跡から脱出したが、何も手に入れられなかった。ラーンの借金はさらに膨らみ、イシェの夢はまた一つ遠ざかる。
「次は必ず成功させる…!」ラーンは力なく呟いた。イシェは彼の後ろ姿を見つめながら、どこか虚しさと諦めの感情を感じていた。