ラーンの豪快な笑いがビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはいつものように眉間にシワを寄せながら、彼の背中に手を叩きつけた。「また大穴の話か? そんな夢を見続けるのはいつまでだ?」
「いつか必ず掘り当てられるさ! そうすればお前も楽ができるぞ」ラーンは剣を肩に担ぎ、陽気に答えた。イシェの視線は彼とは反対方向へ、ヴォルダンとの国境へと続く山脈に向けられた。砂時計のように刻々と過ぎていく時間、そして奪われた未来。
「あの遺跡はどうだ? 噂では古代の王が眠っているらしいぞ」ラーンの言葉に気を取られたイシェは、一瞬だけ自分の影が砂時計のように崩れていくように見えた気がした。
テルヘルは冷静な視線で二人を見据えていた。「情報には信憑性がある。だが、危険も高いだろう。準備を怠るな」
ビレーの賑わいを背に、三人は山道を進んだ。日差しが容赦なく降り注ぎ、砂時計のように流れていく時間を告げるように。イシェはラーンの後ろ姿を見ながら、あの遺跡で何が待ち受けているのか、そして自分たちの未来はどんな形になるのか、不安と希望が入り混じった複雑な感情を抱いていた。