ラーンの大声がビレーの市場にこだました。「今日は必ず大穴だ！」
イシェはため息をつきながら、ラーンが持ってきた粗雑な地図を広げた。「またそんなことを言う？あの遺跡はすでに何十回も探しただろう。何もないって」
「今回は違う！この地図を見ろ！新しい情報が入手できたんだ」
ラーンの指が地図の端を指し示す。イシェは地図に描かれた複雑な記号を睨んだ。確かに、以前にはなかった記号があった。
「テルヘルがくれた情報か？」
「ああ。あいつはヴォルダンに関する情報を集めているらしい。遺跡にも何か関係があるって話だ」
イシェは眉間に皺を寄せた。「ヴォルダン…」
その名はビレーの人々にとって忌まわしいものであった。大国ヴォルダンがエンノル連合に圧力をかける中で、ビレーは特にその影響を受けやすい地域だった。テルヘルもまたヴォルダンに苦しめられた過去を持つ者だった。
「よし、準備だ！今日は必ず大穴を見つけるぞ！」
ラーンの熱意に押されるように、イシェは重い腰を上げた。彼らは小さな荷物を背負い、ビレーの街を後にした。
遺跡への道は険しく、日差しは容赦なく照りつける。イシェは喉が渇き、足取りが重くなった。だが、ラーンの背中は依然として力強く、希望に満ち溢れていた。
「ほら！あの岩陰だ！」
ラーンの声で、イシェは意識を戻した。地図の記号を示す岩陰に着くと、ラーンは興奮気味に地面を掘り返し始めた。イシェも一緒に土を掻き出す。しばらくすると、金属音が響いた。
「何か見つけたぞ！」
イシェは期待を胸に、土を払いのけた。そこにあったのは、錆び付いた小さな金貨だった。
「これ…大穴じゃないな…」
イシェの声には失望がこもった。ラーンも少し肩を落としたが、すぐに明るい表情を取り戻した。
「まあいいさ！今日はこれで十分だ！」
彼は金貨を手に握りしめ、目を輝かせた。イシェは彼の姿を見て、どこか切ない気持ちになった。