ビレーの酒場「荒くれ者の憩い」は今日も賑わっていた。ラーンが豪快に笑い声を上げると、イシェがため息交じりに顔を伏せる。
「またあの話か？」
「ああ、あの遺跡で宝を掘り当てたんだってな！ details を聞いたら、嘘くさいんだけどな！」
ラーンの言葉はいつも大げさだ。イシェはそう思いつつ、テーブルに置かれた地図を見つめた。テルヘルが渡してくれた地図だった。ヴォルダンとの国境付近の遺跡を示すものだ。
「よし、明日の朝、出発だ」
テルヘルの声が響いた。彼女はいつも冷静で、表情を変えることはほとんどなかった。
「あの遺跡は危険だって言ってたぞ。罠とか、魔物とか…」
ラーンの不安げな声に、イシェは小さく頷く。地図に記された遺跡は、確かに危険度が高いとされていた。だが、テルヘルが提示した報酬額は魅力的だった。
「大丈夫だ。俺たちならなんとかなる」
ラーンが自信たっぷりに笑う。イシェは彼の言葉を信じたいと思った。しかし、どこか心安らぐものを感じられない。
翌日、遺跡へと続く険しい道を進む3人。テルヘルは常に周囲を警戒し、ラーンの動きも鋭く見ているように見えた。イシェは地図と照らし合わせながら進んだ。彼女は地図に記された数字の並びに何か意味があるのではないかと考えていた。
「ここが入り口だ」
テルヘルが言った。遺跡の入口は崩れかけており、暗闇の中に吸い込まれるような気がした。
「よし、行くぞ！」
ラーンは先陣を切って中へ入った。イシェはテルヘルの後をついて行く。彼女は振り返り、ラーンの背中に何かを託すように手を合わせた。
遺跡内部は湿気で重く、空気が淀んでいた。薄暗い光が差し込むだけで、ほとんど何も見えなかった。
「ここからは俺たちが先導する」
テルヘルが言った。イシェは少し驚いた。いつもラーンが先頭だったのに。彼女はテルヘルの言葉に何か意味があるのではないかと直感した。
遺跡を進んでいくうちに、イシェは地図の数字の並びと遺跡内の構造に関連性があることに気づく。数字は単なる記号ではなく、特定の場所に隠された仕掛けを表していた。イシェはそれを理解すると同時に、テルヘルの計画の一端を垣間見た気がした。
「ここだ！」
ラーンが叫んだ。目の前には広がる巨大な部屋があった。中央には光る宝箱が置かれている。
「やったぜ！」
ラーンは宝箱に駆け寄ろうとした時、床が突然崩れ、ラーンは深淵へと落ちていった。
「ラーン！」
イシェの声が響き渡る。テルヘルは冷静に状況を判断し、イシェに向かって言った。
「この遺跡には罠が仕掛けられている。ラーンのように無計画に進むと命を落とす。地図の数字の並びをよく見て、次の場所を見つけ出して」
イシェはテルヘルの言葉に従い、地図を注意深く見直した。数字の並びから、ラーンを救うための方法を閃いた。彼女は迅速に行動に移し、遺跡の奥深くに続く通路へと進んでいった。
「なぜ…？」
イシェの声が響き渡る。彼女は迷宮のような通路の先に、ある部屋を見つけた。そこには、ラーンの姿があった。彼は意識を失っているように見えた。
そして、イシェはそこで真実を知ることになる。
テルヘルの真の目的、そして遺跡の奥底に隠された秘密。