遺跡の入り口でラーンが興奮気味に、錆び付いた剣を手に取ると、イシェはため息をついた。「またか?あの剣、一体何回目だ?」「でもさ、今回は違う!なんか感じるんだ、この剣から。きっと何かある。」ラーンの目は輝いていた。イシェは冷静に言った。「そうかな。いつもそう言ってるよ。」
テルヘルが近づいてきて、二つの宝石を光らせた。「準備はいいか?今日は深部まで行くぞ。あの古代の文献には、その奥に隠された部屋があるって書いてあるんだ。」ラーンは目を丸くした。「へえ!?」イシェは眉間に皺を寄せた。「テルヘル、あの文献は信憑性がないだろう。ただの伝説に過ぎない。」テルヘルは冷たい目でイシェを見つめた。「そうかもしれない。でも、リスクを取らなければ何も得られない。私は確信している。あの部屋には、ヴォルダンを滅ぼす鍵がある。」
イシェはため息をついた。ラーンの興奮とテルヘルの執念に巻き込まれるように、遺跡の奥へと進んでいく。暗い通路を進み、落とし穴をかわし、古代の罠を解除していく。イシェは冷静に周囲を観察し、地図を描きながら進路を修正した。彼女の頭脳は、常に次のステップを予測し、リスクを最小限に抑えることに集中していた。
やがて彼らは巨大な石扉の前にたどり着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、解読する必要があるようだった。「これは...」イシェは扉の模様をじっと見つめた。「古代文字だ。だが...こんな複雑な記号体系を見たことがない。」ラーンが不機嫌そうに言った「早く開けてよ!宝が待ってるはずだ!」テルヘルも焦りを隠せない様子だった。「イシェ、頼むぞ。」イシェは深呼吸をして、頭の中でパターンを分析した。
数分後、彼女は扉の解読に成功し、ゆっくりと扉が開かれた。その奥には、広大な部屋が広がっていた。そこには、古代文明の遺物や書物が所狭しと並んでいた。ラーンの目は輝き、テルヘルは興奮を抑えきれなかった。しかし、イシェは何かがおかしいことに気づいた。部屋の雰囲気、配置された遺物の種類...全てが計算され尽くされているように感じた。
「待て!」イシェが叫んだ。「ここは罠だ!」その時、床から鋭い棘が飛び出してラーンを襲った。イシェは素早くラーンの体を押し出し、棘をかわした。しかし、テルヘルは遅かった。棘が彼女の肩に刺さった。
イシェは冷静さを失わず、周囲を観察し始めた。部屋の隅には、影の中に誰かが立っているのが見えた。「出てこい!」イシェの声は響き渡った。影の人物はゆっくりと姿を現した。それは、ヴォルダン軍の制服を着た男だった。「ようこそ、遺跡へ。」男は嘲笑した。「あなたがここに来たのは、全て計画のうちだ。」