ビレーの朝焼けが、ラーンの瞼をそっと撫でて目覚めさせた。イシェは既に準備を終えていた。「今日はあの洞窟だぞ。テルヘルが言うには、何か珍しいものが見つかるらしい」
「またかよ、珍しいものってなんだよ。いつも『珍しい』って言うんだろ？結局、ただの石ころばっかりじゃん」ラーンは愚痴をこぼしながらも、イシェの用意した食料袋を肩に担いだ。「よし、行こうぜ！」
洞窟の入り口には、テルヘルが待っていた。「今日は特に慎重に進もう。情報によると、遺跡を守る罠が仕掛けられているらしい」彼女の言葉は冷酷で、瞼の奥から鋭い光を放っていた。
薄暗く湿った洞窟の中を進んでいくと、壁に奇妙な模様が刻まれていることに気づいた。イシェは眉間にしわを寄せながら、模様を指さした。「これって…見たことあるような…」
ラーンはイシェの言葉を無視して、剣を構えたまま先へ進もうとした。「おい、待てよ！何か変だな…」イシェが叫んだその時、床に埋められた石が光り始め、洞窟中に衝撃波が広がった。
ラーンの瞼は瞬きした。目の前で起きたことの意味を理解する間もなく、激しい痛みと轟音が彼を襲った。意識を失う直前、イシェの悲鳴がかすかに聞こえた気がした。
目を覚ますと、そこは狭い石室だった。イシェが心配そうに顔を覗かせている。「ラーン！大丈夫？意識が戻ったわ！」
「何…何があったんだ？」ラーンの瞼は重く、体の痛みで頭がぼんやりしていた。
イシェはゆっくりと説明した。「あの光…あれは罠だったみたい。お前を気絶させて、ここへ閉じ込められたんだ」
ラーンはイシェの話を聞きながら、自分の無謀さを痛感した。テルヘルに頼りすぎ、軽率に洞窟に飛び込んだことが、今のように危険な状況に追い込んでしまったのだ。そして、何か大切なものを失ってしまったような気がした。それは、イシェの瞳の中に宿る、今まで見たことのない深い悲しみだった。
「イシェ…」ラーンの言葉はかすれていた。「何があったんだ？テルヘルは？」
イシェは言葉を濁し、視線をそらした。「…テルヘルは…」