ラーンの豪快な笑い声が遺跡の奥深くまでこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼を睨みつけた。「また無駄なエネルギーを使うな。あの石碑はただの装飾だ。」
ラーンは肩をすくめた。「いや、イシェ。見てみろよ。この細工、まるで生き物のようだぞ！きっと何か秘密が隠されているはずだ！」彼の目は興奮で輝いていた。イシェはため息をつき、石碑の表面を慎重に撫でた。確かに精巧な彫刻だが、ただの装飾品に思えた。
「ラーン、落ち着いて。無駄な探索は時間と労力を浪費するだけだ」テルヘルが静かに口を開いた。彼女の鋭い視線はラーンの動きを捉えており、まるで彼の思考を透かしているようだった。
「だがテルヘル、もしこれが大穴への手がかりだったら？」ラーンの目は輝きを増し、興奮を抑えきれずにいた。「あの伝説の財宝を手に入れるのは、俺たちだ！」
イシェは彼に冷たい視線を向けた。「大穴なんて、ただの迷信だ。現実的に考えてみろ、ラーン。遺跡探索で稼いだお金で、 barely 食べていけているのが現状だ。」
ラーンの笑顔が消えた。「でも、いつか必ず大穴を見つけるんだ。俺たちは絶対に成功する！」彼は拳を握りしめ、揺るぎない信念を表明した。テルヘルは彼をじっと見つめた後、小さく頷いた。「いいだろう、ラーン。しかし、今回は私の指示に従うのだ。」
日が暮れ始め、遺跡の内部は薄暗くなり始めた。イシェは懐中電灯の光を石碑に当て、細部まで確認した。「何もない…」彼女は呟いた。その時、テルヘルが静かに手を挙げた。
「待て」彼女の視線は石碑の上部に注がれていた。「ここを見て」
イシェはテルヘルの指さす方向を見た。石碑の頂上には、小さな凹みが一つあった。そこに何かを差し込む必要があるのかもしれない。イシェは自分の懐から小さな水晶のペンダントを取り出した。それは、彼女の祖母の形見であり、いつも肌身離さず持ち歩いていたものだ。
「これを使うか？」
テルヘルは頷いた。「試してみよう」
イシェが水晶を凹みに差し込んだ瞬間、石碑に刻まれた模様が淡く光り始めた。そして、その光はゆっくりと広がり、やがて遺跡全体を包み込んだ。
イシェは目を閉じ、静かに息を吸い込んだ。水晶の冷たさが彼女の掌に伝わる感覚、そして石碑から放たれる不思議な光。まるで、何かが彼女の中に流れ込んできたような気がした。その時、彼女の心の中で、かすかな声が聞こえた。それはまるで、遠い過去から届いたささやきだった。
「瞑想…沈黙…真実…」