ラーンが力任せに岩をこじ開けると、埃っぽい空気が吹き荒れた。イシェは咳き込みながら「また無駄な努力だな。あの隙間から入れないのは明らかだ」と呟いた。ラーンの顔は汗で輝いていた。「いや、ほら見てみろ!奥に何か光ってるぞ!」
彼は興奮気味に指差したが、イシェは冷静に首を振った。「あれはただの水晶だろう。この遺跡には水晶はよくある。大穴ではない」。テルヘルが両手を腰に当てて静かに見つめていた。「確かに、水晶だとしても、市場ではそれなりの値段が付く。今回は妥協しよう。まずはこの部屋の調査を優先し、その後で次の目標を探そう」
ラーンの肩が落っこちた。「わかったわかった。イシェはいつも通り慎重だな」。テルヘルは鋭い視線で彼らを睨みつけた。「慎重さは生存に不可欠だ。特に君たちのような連中はな」と冷たく言い放った。
日が暮れるにつれ、彼らは疲弊した体を引きずってビレーに戻った。イシェは tavern で酒を一杯飲みながら、「今日の収穫は水晶だけか…」とため息をついた。ラーンが陽気に「まあ、今日はいい日だったぞ!明日ももっと探検しようぜ!」と言いながら、豪快にグラスを空にした。
テルヘルは静かに酒を味わっていた。「彼らにはまだ理解できないだろう」と呟いた。彼女は過去を思い出すたびに胸が締め付けられる。ヴォルダンが奪ったものは、彼女にとってかけがえのないものだった。復讐を果たすためには、どんな手段もいとわない。
そして、その復讐の火種は、今まさに燃え上がり始めていた。