ラーンの大 hammer が石の壁を叩き砕いた時、埃が舞い上がり、イシェの鼻をくすぐった。彼女は咳払いをして、「また無駄な労力だ。」と呟いた。
「ほら、何かあるって!この壁の模様、見てみろよ!」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をつきながら壁に近寄ると、確かに複雑な紋様が刻まれていた。「何の紋様だろうね…」
その時、テルヘルが声色を硬くした。「静かにしろ。」彼女は鋭い視線で奥へと進んでいった。ラーンとイシェも警戒しながら続いた。奥深くには広がる空間があり、中央に石柱が立っていた。柱の上部には、まるで燃え盛る炎のような赤い結晶が埋め込まれていた。
「これは…」テルヘルは息を呑んだ。「火の精霊の結晶だ。」
ラーンは目を丸くした。「そんな貴重なものが…」
「だが、危険だ。」テルヘルは顔を曇らせた。「この結晶に触れると、激しい炎が周囲を巻き込み、制御不能になる恐れがある。」
イシェは慎重に柱を一周し、結晶の周囲を注意深く観察した。「何か…引っかかるものがないか探してみよう。」彼女は言った。
「そんな無駄な…」ラーンの言葉が途絶えた。イシェが指さす方向を見て、彼は言葉を失った。柱の根元に、小さな穴があった。そこに、細長い金属棒が差し込まれていた。
イシェはゆっくりと金属棒を引き抜いた。すると、結晶から細い赤い光が流れ出し、金属棒に沿って地面へと注ぎ込まれた。その瞬間、周囲の空気が熱くなり始め、ラーンの顔に汗が滲み始めた。
「やめて!すぐに元に戻せ!」テルヘルは叫んだが、イシェは冷静さを保っていた。「まだだ。」彼女は言った。「この炎を制御できる方法があるはずだ。」
イシェは金属棒を手に取り、結晶に向かってゆっくりと近づけた。その瞬間、赤い光が激しく燃え上がり、炎が渦巻き始めた。ラーンは思わず後ずさったが、イシェは立ち止まり、炎をじっと見つめた。そして、彼女は小さく頷いた。
「わかった。」
彼女は金属棒を結晶に軽く触れさせると、炎が収束し、ゆっくりと消えていった。結晶は静かに輝き続け、周囲の空気が冷めていった。
イシェは深く息を吐き、疲れを感じた。ラーンの顔には驚きと畏敬の念が浮かんでいた。テルヘルは、複雑な表情でイシェを見つめた。炎を制御する鍵は、恐らくイシェの中にあったのだ。そして、それは彼女の人生を変える可能性を秘めていた。