着服

公金や他人の金品を自分のものとすること。

物語への影響例

信頼の侵害と背信。欲望と倫理の葛藤。社会的規範の破壊。

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日差しが容赦なく降り注ぐ灼熱の砂漠を、ラーンとイシェは足早に進んでいく。背後にはテルヘルが、薄ら笑いを浮かべながら二人を見下ろしている。

「本当にここなのか?」イシェは埃っぽい風を避けるように顔をしかめながら言った。「あの地図、本当に信頼できるのか?」

ラーンは肩をすくめて答えた。「大丈夫だ、テルの言うことは間違いないさ。あいつは遺跡のことなら詳しいんだ。」

テルヘルは静かに「そう、私は知っている」と呟き、地図を広げた。そこに記されたのは、古代文明の遺産であるとされる巨大なピラミッドの場所だった。その内部には、莫大な財宝が眠っていると噂されている。だが、同時に危険も潜んでいるという話も耳にしたことがある。

彼らはピラミッドにたどり着くと、入り口には巨大な石門がそびえ立っていた。石門には複雑な模様が刻まれており、テルヘルはそれを真剣な顔で観察している。

「この記号…私は見たことがある」と彼女は呟く。「ヴォルダン王家の紋章だ。ここにヴォルダンの遺跡があったとは…」

ラーンの表情が曇った。「ヴォルダンか…まさかあの大国が…」

イシェも不安そうに言った。「もし本当なら、ここは危険すぎるぞ。引き返したほうがいいんじゃないか?」

だが、テルヘルは冷静に言った。「私たちはもう後戻りはできない。この遺跡には私が復讐を果たすための鍵がある。」

彼女は深呼吸をして石門に手を伸ばし、紋章をなぞるように触れた。すると石門がゆっくりと開き始めた。

「さあ、中へ入ろう」テルヘルは先導するようにピラミッドの中へと歩き出した。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせ、渋々テルヘルの後を追うことになった。

ピラミッドの内部は暗く湿っていた。壁には謎の文字が刻まれており、床には落とし穴が設けられていた。彼らは慎重に足取りを運びながら進んだ。

やがて、彼らは広大な部屋に出た。部屋の中央には、金でできた巨大な棺が置かれていた。棺の上には、宝石が埋め込まれた王冠が輝いている。

「これが…財宝か…」ラーンは目を丸くした。イシェも息を呑んだ。だが、テルヘルは冷静に言った。「これはまだ序の口だ。」

彼女は棺に近づき、王冠を持ち上げた。すると、棺の中から声が聞こえてきた。それは、深い眠りから覚めた亡霊の声だった。

「汝…誰だ?」

テルヘルは微笑んで答えた。「私は復讐のために来た者だ。」そして、彼女は王冠を手に持ち、ゆっくりと棺の中に手を伸ばした。

その時、イシェは何かを感じ取った。

「待て!」

彼は叫んだが、既に遅かった。テルヘルの手が棺の中で何かを掴み取った瞬間、部屋の空気が激しく渦を巻き始めた。壁から石が崩れ落ち、床に深い亀裂が入った。

「何をした?」イシェは恐怖で声をかき消すように言った。

テルヘルは邪悪な笑みを浮かべて言った。「私は何もしていない。ただ、この遺跡の真の宝物を手に入れただけだ。」

そして彼女は棺から何かを引き抜き、それを自分のものにした。それは、王冠よりもはるかに価値のあるものだった。それは、ヴォルダン王家の秘伝の書、そしてその中に記された、莫大な財宝の在り処の情報だった。

イシェは絶望した。テルヘルは最初から彼らを騙していたのだ。遺跡に眠る財宝を手に入れるために、ラーンとイシェを利用し、彼らの力を借りて自分の目的を果たそうとしていたのだ。そして、ついに彼女は成功した。

「これで終わりだ」テルヘルは言った。「私はこの世界に復讐する。そして、その代償として、お前たちは…」

彼女は言葉が終わる前に、ラーンの目の前でイシェを攻撃した。イシェは驚きと共に転倒し、意識を失った。ラーンは怒りと悲しみで胸が締め付けられるのを感じた。彼はテルヘルに向かって剣を振り上げた。

「テェル!」

しかし、彼の攻撃は空を切った。テルヘルはすでに彼らを置き去りにして、ピラミッドから姿を消していた。残されたのは、崩れ落ちる遺跡と、絶望に打ちひしがれるラーンだった。