ラーンの粗雑な足音だけが響く、湿った石畳の通路。イシェは後ろを振り返り、ラーンに小さくため息をついた。「本当に、いつもこんな急いでいるのかしら。」
「そうしないと、いいもんが見逃されちゃうぞ!」ラーンは振り返りもせず、前へ踏み出した。彼の背中には、まるで巨大な影が張り付いているようだった。イシェは自分の視界を揺らすような不快感に襲われた。この遺跡の奥深くには、何か邪悪なものが潜んでいるような気がした。
「あいつら、本当にここに来たんだな。」テルヘルは冷めた声で言った。ラーンの背後からゆっくりと姿を現し、イシェの肩を軽く叩いた。「準備はいいか?」
イシェはうなずいた。彼女の視界は、まるで部屋が回転しているように揺れていた。テルヘルの言葉がかすかに歪んで聞こえた。「もちろん。」
彼らは巨大な石の扉の前に立った。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのようだ。ラーンが扉を押し開けると、 blindingly bright光が彼らを包んだ。イシェは目をぎゅっと閉じた。眩暈が襲い掛かり、彼女は自分の足元すら見失った。
「何だこれは…!」ラーンの声が遠くに響き渡った。イシェはゆっくりと目を空け、その光景に息を呑んだ。広がるのは、一面の黄金の砂漠だった。太陽の光が砂に反射し、 blindingly bright輝きを放っていた。そして、砂漠の真ん中には、巨大なピラミッドがそびえ立っていた。
「宝だ…」ラーンの声が興奮で震えた。「ついに…!」
イシェは、ラーンの後ろ姿を見て、何かがおかしいと感じた。彼の影が、まるで自分の影よりも長く伸びているように見えた。そして、その影には、不気味な赤い光が宿っていた。
「待て、ラーン。」イシェは声を張り上げた。「何か変だ…」
しかし、ラーンの耳には届いていなかった。彼はすでにピラミッドに向かって走り出していた。イシェは彼の後を追うように動き出したが、足元が不安定で、まるで重力すら違っているような感覚に襲われた。
「イシェ、早く!」テルヘルが彼女の手をつかみ、引っ張った。「あのピラミッドには、危険なものがある。」