朝の陽光がビレーの屋根瓦を照らした。ラーンはイシェを待たずに先に tavern から出ていた。昨日見つけた遺跡の地図を広げ、眩しい光を浴びながら確認する。今日はテルヘルからの依頼で、ヴォルダンと国境付近にある遺跡へ行く予定だ。
「遅っつーの！」イシェが慌てて tavern のドアを開け、ラーンに詰め寄った。「何でいつもこんなに早いの？」
ラーンの笑顔は眩しい。「いいじゃないか、早く遺跡に行って宝探しだ！」
イシェはため息をつきながら地図を広げる。ヴォルダンとの国境に近い場所だと、危険度は高い。「今回はテルヘルが言うように、慎重に行動しようね。」
「わかったわかった。」ラーンはイシェの言葉を無視して、近くのパン屋へ駆け込んでいった。イシェは呆れながらも、ラーンの後ろ姿を追いかけるように歩き出す。
テルヘルは既に遺跡の入り口付近で待っていた。黒曜石のような瞳が、眩しい朝の光を反射している。「遅刻だ。」と彼女は短く言った。
「ごめんごめん、準備が遅くなって」ラーンは汗を拭いながら言い訳する。イシェはテルヘルに深々と頭を下げた。「申し訳ございません。」
テルヘルは何も言わずに遺跡へと足を踏み入れる。遺跡の入り口は暗く湿っていた。ラーンの持つ火の粉だけが、眩しい光を放つ。
「ここだ。」テルヘルは壁に手を当てると、何かを呟いた。壁の一部が沈み込み、奥へと続く階段が現れる。
「行くぞ！」ラーンは剣を抜いて先頭に立ち、イシェとテルヘルが後に続く。階段を降りるにつれて、周囲の空気は重くなり、湿った土の匂いが強くなる。
彼らは深く暗い遺跡の中へと進んでいく。 ahead