ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝に響き渡った。「よし、今日はきっと大穴だ！」彼の目は輝いていたが、イシェは眉間にしわを寄せた。「またそんなこと言うよ。昨日も『今日こそ』だったじゃないか」。
「でも昨日は確かに謎の石板が出てきただろ？あれはきっと何かの鍵になるに違いない！」ラーンの言葉は熱意に満ちていたが、イシェは冷静に反論した。「石板から財宝が見つかる保証はどこにもない。それに、テルヘルに約束した日当を稼ぐことが先決だ」。
テルヘルの依頼で遺跡探索を行うのは、彼らが目指す「大穴」を見つけるためだけではなかった。ヴォルダンへの復讐を誓うテルヘルは、遺跡から得られる情報や遺物を利用し、その目的を果たそうとしていた。ラーンとイシェはその過程で巻き込まれているだけだった。
「いい加減にしろよ、イシェ。いつまで真面目な奴なんだ？」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。「私はただ現実的だと言いたいだけ」。
遺跡の入口に近づくにつれて、空気が重くなっていった。テルヘルは地図を手に、慎重に進む道を指示した。彼女の目は冷酷で、目的達成のためには手段を選ばないことを伺わせた。
「ここからは気をつけろ。罠があるかもしれない」テルヘルの警告に従い、ラーンとイシェも警戒を強めた。しかし、その瞬間、地面が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。「ラーン！」イシェの声が洞窟に響き渡った。
「大丈夫だ！俺はまだ生きてる！」ラーンの声が聞こえてきたが、イシェの心は不安でいっぱいになった。テルヘルは冷静に状況を分析し、「ロープを下ろせ」と命令した。
イシェが慎重にロープを降ろし、ラーンを助け上げた。彼は顔から土埃を払い、「やっぱり大穴だったか…」と苦笑した。イシェは彼の無茶な行動に呆れたが、同時に彼の人生の明るさに救われた気がした。
「よし、今日はもうやろう」イシェが言った。「日が暮れる前にビレーに戻らないといけない」。ラーンは少し不満そうだったが、テルヘルの厳しい視線を感じて黙った。
3人は遺跡を後にし、ビレーへと戻っていった。日が沈むにつれて、空に赤く染まる光が、彼らの影を長く伸ばした。イシェは、真面目な自分とラーンの無茶な行動のバランスが、彼らにとって必要なものなのかもしれないと思った。