ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩を軽く叩いた。
「また遺跡で失敗したんだろう?あの宝の地図、本当にあながち嘘じゃなかったのか?」
ラーンの顔色が曇る。「いや、今回は違うんだ!明らかに何かがあった、奥深くまで入ったんだぞ。でも、罠が仕掛けられてて…」
イシェはため息をついた。「いつも同じ話だな。あの地図、本当にあてにならないんじゃないか?」
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女はいつものように黒づくめの上下を身にまとっていたが、今日は表情が硬かった。
「2人ともだ。新しい依頼がある」
ラーンの顔に期待の色が戻った。「また遺跡か?今度はどんな場所だ?」
テルヘルはテーブルに一枚の地図を広げた。「今回はヴォルダンとの国境に近い場所だ。古い城跡らしい。そこには、ヴォルダン王家の歴史を記した書物があるという噂だ」
イシェは地図を指さした。「この場所…危険じゃないか?ヴォルダンの兵が巡回しているはずだぞ」
テルヘルは冷たい目で言った。「だからこそ、報酬も高い。成功すれば、2人の未来を大きく変えることができるだろう」
ラーンは目を輝かせた。「よし、行くぞ!イシェ!」
イシェはためらいながら頷いた。
「わかった…でも、今回は本当に気を付けてくれよ。あの地図の呪いみたいなの、本当に怖いわ…」
テルヘルは小さく笑った。「呪い?そんなものはない。ただ、過去に囚われている者だけが、未来を手に入れられないだけだ」
3人はビレーを出た。夕暮れの空の下、彼らの影が伸びていく。
ラーンはテルヘルの言葉に少しだけ引っかかっていた。過去に囚われる…一体、彼女は何を隠しているのか?そして、あの地図の真実は何なのか…?