ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を見つめているのをイシェは眉間にしわを寄せながら眺めていた。
「本当にここなのか?あの噂の『紅玉の墓』って、本当にこんなところに隠れてるのか?」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。
「そんな話、聞いたことないわよ。それに、この遺跡はすでに何年も前に調査済みじゃないの?」
「ああ、そうだったな。でも、あの時の調査隊は『何も見つからなかった』って言ってただけだろ?つまり、まだ何か隠されているって可能性もあるってことさ!」
ラーンの瞳には、いつものように興奮と期待が輝いていた。イシェは彼の熱意に巻き込まれながらも、どこか冷静さを保っていた。
「でも、そんな大発見があったら、相場がもっと高くなってたはずよ。それに、テルヘルもそんな話を持ち出したわけじゃないし…」
ラーンの肩を叩きながらイシェは続けた。
「それに、今日の報酬はいつものように日当だけなんだからね。無理にリスク取る必要はないわ」
しかしラーンの耳には、イシェの言葉は届いていないようだった。彼はすでに遺跡の入り口へと足を踏み入れようとしていた。
「よし!大穴を見つけられるまで、探検だ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後を続けた。
テルヘルは彼らの様子を静かに見ているだけで、何も言わなかった。だが、彼女の瞳には冷酷な光が宿っていた。
「紅玉の墓」の存在は真実なのか?そして、そこに隠されたものは何なのか?
テルヘルは、この遺跡探検に隠された真の目的を胸に秘めていた。それは、ラーンやイシェとは全く異なるものだった。