ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝にこだました。イシェはいつものように眉間にシワを寄せていた。「また大穴の話か?」とため息をつくと、ラーンは「いつか必ず見つけるさ!お前も一緒に大金持ちになれる!」と胸を叩いて笑った。その様子を見てテルヘルは唇を少し曲げた。彼らの無邪気さに少し苛立ちを感じることもあったが、それは彼らを利用するための手段の一つに過ぎなかった。
遺跡の入り口でラーンが興奮気味に遺物の話をすると、イシェは慎重に周囲を警戒した。テルヘルの指示に従い、彼らは複雑な仕掛けを解き明かし、奥へと進んでいった。しかし、その先に待っていたのは予想外の光景だった。ヴォルダンの紋章が刻まれた石碑がそびえ立ち、周囲には凍りついた空気が漂っていた。
「これは...」イシェは言葉を失った。ラーンは警戒心を剥き出しにして剣を構えた。「ヴォルダンか!」テルヘルは冷静に状況を判断した。彼女の目的は復讐であり、この遺跡がヴォルダンと何か関係があることは明らかだった。しかし、今は逃げるべきだと判断し、撤退を指示した。
ラーンの不機嫌な顔色とは対照的に、イシェは少し安心した様子を見せた。テルヘルの冷静さは時に彼らを危機から救うこともあった。だが、イシェには一抹の不安がよぎった。ヴォルダンとの遭遇は避けられないのか?そして、この遺跡には一体どんな秘密が隠されているのか?
彼らはビレーに戻り、今日の出来事を共有した。ラーンの夢を嘲笑するようなヴォルダンの紋章は、彼らに厳しい現実を突きつけた。イシェはラーンに「大穴」の話はやめてほしいと訴えた。しかし、ラーンは目を輝かせ、「あの遺跡には何かがある!必ず見つけ出す!」と叫んだ。
テルヘルは二人の様子を見つめ、複雑な表情を浮かべた。彼らの夢と憎しみ、そして自身の復讐心。全てが交錯するこの境の国で、どんな結末が待っているのか。