ラーンの大雑把な swing で埃が舞い上がった。イシェは鼻をつまんで不機嫌そうに言った。「また無駄な動きだな。あの石碑には何も書いてないってさっき言っただろう」。ラーンは肩をすくめて、「雰囲気で分かるだろ、何かあるって」と笑った。だがイシェの眉間に皺が深く刻まれた。彼女はテルヘルに視線を向け、「何か情報を得られたのか?」と尋ねた。
テルヘルは薄暗い遺跡の奥深くを見つめていた。「この遺跡には古代の防衛システムが残されている可能性がある。罠の可能性もある」彼女の目は鋭く光っていた。「もし、それが本当なら、ヴォルダンが欲しがっているものにも繋がるかもしれない」。イシェは少し安心したように頷いたが、ラーンの顔色が変わってきたことに気づいた。「どうしたんだ?」
ラーンの視線は遺跡の奥深くにある、崩れかけた通路に注がれていた。「あの通路…見たことがあるような気がする」彼の声は震えていた。「かつて父が…」彼は言葉を濁し、目をそらした。イシェはラーンの過去を深く知る者として、彼を苦しめる記憶を垣間見た。
「父さんもこの遺跡を探していたのか?」テルヘルは冷静に尋ねた。ラーンは頷き、拳を握りしめた。「父さんは、この遺跡に何か大切なものがあると信じていた。そして、そのものをヴォルダンから守るために…」彼の声が途絶えた。イシェはラーンの痛みを理解した。彼女は彼に寄り添い、「私たちは一緒に探す。父さんの願いを叶えるために」と静かに言った。
テルヘルは二人の視線を交わし、わずかに唇を動かした。「ヴォルダンを倒すためにも、そして、この遺跡の謎を解き明かすためにも…私たちには進むべき道がある」。彼女の目は決意に燃えていた。三人は互いに言葉なく頷き合い、崩れかけた通路へと足を踏み入れた。