ラーンが巨大な石扉を蹴り開けるような勢いで遺跡内部へ入っていった。イシェはいつものように眉間に皺を寄せ、後ろからゆっくりと続く。
「また、計画もなしに飛び込んでいくとは…」
イシェの言葉にラーンは振り返らず、「ほら、大穴だ!」と叫びながら奥へと進んでいった。扉を開けた瞬間、ラーンの視界に入ったのは広大な地下空間だった。天井には無数の光る結晶が輝き、その光が壁一面に描かれた複雑な模様を浮かび上がらせている。
「すごい…こんな遺跡、初めて見たぞ!」
ラーンの興奮を抑えきれず、石の階段を駆け下りていく。イシェはため息をつきながら後を追いかける。
「あの、あの…」
イシェが声をかけようとしたその時、テルヘルが手を上げ、二人に静止を命じた。彼女は鋭い視線で周囲を見回し、何かを探しているように見えた。
ラーンの興奮冷めやらぬ様子を見て、イシェはテルヘルに目配せした。テルヘルは小さく頷き、ゆっくりと石壁に近づいていく。彼女の指先が壁の模様に触れると、壁の一部がわずかに沈み込んだ。すると、壁から低く唸るような音が響き渡り、床が震え始めた。
ラーンの顔色が一変した。「おい、何だこれは!?」
イシェは落ち着いて状況を判断しようと努めた。テルヘルは少しだけ口角を上げて、ラーンとイシェの視線を交わすように頷いた。その瞬間、壁から大量の砂塵が噴き出し、三人は coughing しながら後ずさった。
視界がクリアになると、壁には巨大な扉が開き、奥へと続く通路が現れた。扉の上には、複雑に絡み合った文字が刻まれており、テルヘルは真剣な表情でその文字を眺めていた。
「これは…」
イシェはテルヘルの言葉を待つが、彼女は何も言わずにラーンとイシェを見つめた。そしてゆっくりと口を開いた。
「行く準備はいいか? 」