ビレーの朝焼けが遺跡の崩れかけた石造りの壁を赤く染めていた。ラーンはイシェを起こすために、石を投げつけた。「起きろ起きろ!今日は大穴が見つかるって気がするんだ!」
イシェは眠ぼけでラーンの顔を見つめた。「またかよ。そんな夢ばかり見てるから大穴なんて見つからないんだよ」と呟きながら立ち上がった。
テルヘルが二人に厳しい視線を向け、「まだ準備が終わっていない。時間に無駄にするな」と冷たく言った。彼女はいつも通り、黒曜石の指輪を握りしめ、その鋭い輝きが朝の光を反射した。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。ラーンの足音だけが、静寂に響いていた。「ここは以前も調査した場所だな。何も見つからなかったはずだが…」イシェが呟くと、ラーンは「今回は違う!何か感じるんだ!」と興奮気味に言った。
彼らは遺跡の中腹にある崩れた石の間を慎重に進んだ。テルヘルはいつもより緊張した表情で周囲を警戒しながら歩いていた。突然、ラーンが叫んだ。「ここだ!何かある!」彼の指さす方向には、壁の一部が崩れ落ちていて、その奥から光が漏れているように見えた。
イシェは懐中電灯を照らして確認すると、そこには石棺が置かれていた。棺の上には複雑な模様が刻まれており、それは今まで見たことのないものであった。「これは…!」イシェは息をのんだ。
棺の蓋を開けると、そこには美しい女性の姿の彫像が眠っていた。彼女の顔には穏やかな表情が浮かんでおり、まるで生きているかのように見えた。
「これは何だ?」ラーンが近づいて彫像を触ろうとした瞬間、床から激しい光が立ち上り、遺跡全体が揺れた。
その時、テルヘルは目を大きく見開いた。「これは…!」彼女は黒曜石の指輪を握りしめ、強い意志で呟いた。「目覚めか…」
そして、光の中に包まれた彫像はゆっくりと動き始めた。