ビレーの朝焼けは、荒涼とした山々に反射して紅く染まっていた。ラーンは粗雑なパンを頬張りながら、イシェが慎重に地図を広げている様子を見つめていた。「今日はあの遺跡だな? 噂によると、そこには古代の王冠が残されているらしいぞ!」
ラーンの声は興奮気味だったが、イシェは眉間にしわを寄せた。「情報源は怪しい。しかも、ヴォルダン軍がその辺りを頻繁に patroliingしているという話もある。危険すぎるんじゃないか?」
「大丈夫だ! 俺たちが行くなら何も怖くないぜ!」 ラーンは胸を叩き、豪快に笑った。だがイシェの視線は、ラーンの背後にあるテルヘルに向いていた。彼女はいつも冷静な表情を崩さず、地図に記された遺跡の位置を確認していた。
「よし、準備はいいか? 今日の報酬は高額だぞ。成功すれば、しばらくは楽ができる」 テルヘルの声は冷たかったが、ラーンの心は躍っていた。
遺跡への道は険しく、足元の岩場は不安定だった。イシェは慎重に足を踏みしめる一方で、ラーンは軽快に進んでいく。視界を遮る茂みの中から、鳥のさえずりが聞こえてくる。しかし、イシェの耳には、鳥のさえずりよりも、遠くでかすかに聞こえる金属音の方が気になる。
「何か聞こえたか?」 イシェはラーンの腕を引き止めたが、彼はすでに遺跡の入り口に立っていた。「早く行こうぜ! 宝物が待ってるぞ!」
テルヘルもイシェの疑問を無視し、遺跡へと続く石段を上り始めた。イシェはため息をつきながら後を追った。遺跡の内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には、何千年も前の文字が刻まれていた。ラーンは興味津々に壁に手を触れようとしたが、イシェが慌てて止めに入った。
「触るな! Curseのかかった遺跡だかもしれないぞ!」 イシェの言葉に、ラーンは苦笑した。「またお前か? 俺たちは冒険者だぞ! 危険と隣り合わせなのは当然だろ?」
しかし、イシェは目を背けずに言った。「危険を犯すことと、無謀な行動の違いを理解すべきだ」 その瞬間、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。ラーンとイシェは一瞬で顔を見合わせた。その音は、鳥のさえずりでも、金属音でもないものだった。まるで、何かが目を覚ましたような、ぞっとするような音だった。