ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快な笑いを上げ、イシェがため息をつく。テーブルの上には空になった酒樽と、テルヘルが持ち込んだという奇妙な地図を広げている。
「ほら、イシェ。見てみろ！この遺跡は、きっと大穴だ！」
ラーンの指が地図の複雑な記号をなぞる。「古代ヴォルダン人の王墓らしいんだって。宝石や金貨で埋め尽くされているって噂もあるぜ！」
イシェは眉間にしわを寄せた。「そんな噂、聞いたことないわ。それに、ヴォルダン人の遺跡なんて危険すぎるんじゃないの？あの辺りはヴォルダンの監視が厳重だって…」
「大丈夫だ！俺たちにはテルヘルがいるじゃないか。彼女が言うなら、きっと安全な方法があるはずだ。」ラーンは自信満々に言った。
テルヘルは地図をじっと見つめ、唇をわずかに動かした。「危険は伴うが、成功すれば莫大な報酬を得られる。私はそのリスクを承知の上で提案する。」彼女の目は冷たい炎のように燃えていた。
イシェは不安げにラーンを見た。「本当に大丈夫なの？あのテルヘル、何か隠し事があるんじゃないか…」
ラーンの表情は少し曇った。「まあな…でも、あの地図は本物らしいし、俺たちの生活を変えるチャンスだ！それに、テルヘルもヴォルダンに恨みがあるみたいだし、一緒に力を合わせて、何かできるんじゃないか？」
イシェはため息をついた。ラーンの熱意と、テルヘルの冷酷な計算、そしてこの街の影に潜むヴォルダンの監視…。全てが複雑に絡み合い、不安定な均衡を保っているように感じられた。
「わかったわ…でも、何か変なことがあればすぐに引き返しますよ。」
ラーンは笑顔でイシェの手を握りしめた。「もちろんだ！一緒に大穴を見つけて、ビレーを飛び出して、自由になるぞ！」
三人は、夕暮れの光が差し込む酒場から立ち上がり、影に包まれた街へと消えていった。彼らの背後には、ヴォルダンからの監視の目が鋭く光っていた。