「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」
ラーンの腕が、イシェの肩に力強く乗せられる。いつも通り、無謀な計画だと思ったイシェはため息をついた。
「また、あの危険な塔か?ラーン、あの塔は噂では呪われているぞ。行く前にちゃんと調査すべきじゃないのか?」
ラーンの顔は興奮で輝いていた。「調査なんて面倒くさい!大穴が見つかるかもしれないんだぞ!それに、テルヘルさんが報酬を上げてくれただろ?」
イシェはテルヘルの存在に気が重くなった。あの女の鋭い視線はまるで、彼らの魂まで見透かしているようだ。
「確かに報酬は魅力的だけど…」
イシェが躊躇していると、テルヘルが声を荒げた。
「何をしている?時間だ!準備を済ませろ!」
その言葉に、ラーンはニヤリと笑った。イシェは二人を見つめて、小さく頷いた。
崩れかけた塔の入り口で、イシェはラーンの背中に手を当てた。彼の背中はいつも頼りがいがあるように感じた。
「気をつけろよ」
「ああ、心配するな!俺たちは盟友だぞ!」
ラーンはそう言って塔の中へ飛び込んだ。イシェは彼を信じて、後を追いかけた。
塔の内部は暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れかけた石畳を慎重に踏みしめながら、彼らは奥へと進んだ。
「ここには何かあるはずだ」
ラーンの視線は、壁に描かれた奇妙な記号に釘付けになった。イシェもその記号に興味を持ったが、どこか不気味に感じた。
その時、突然、床が崩れ落ちた。ラーンはバランスを崩して転げ落ち、イシェは彼の手を掴んで引き上げた。
「大丈夫か?」
「ああ、何とか」
ラーンの顔には少し血がついていた。イシェはすぐに彼の傷口に薬草を塗った。
「気をつけろよ、ラーン。この塔は本当に危険だ」
ラーンはイシェの言葉を無視して、崩れた床の下を覗き込んだ。そして、彼は驚愕の声を上げた。
「イシェ!見てみろ!」
イシェが覗き込むと、そこには輝く宝石が山積みになっていた。それは、彼らが探していた大穴だった。
「やったぞ、イシェ!ついに大穴を見つけたぞ!」
ラーンの喜びは爆発した。イシェも思わず笑みがこぼれた。二人は互いに抱き合い、その瞬間、彼らは真の盟友になった気がした。