ラーンの大声がビレーの朝の静けさに響き渡った。「おいイシェ、起きろ！今日はいい日になるぞ！」
イシェは眠い目をこすりながら起き上がると、ラーンがテーブルの上で朝食を狼汚しているのを見つけた。粗末なパンとチーズに、薄いスープが添えられている。いつも通り、大穴を掘り当てて豪遊する日を夢見ているのだろう。
「また遺跡に行くのか？」イシェはため息をつきながら言った。「あの遺跡は何度も探しただろう。もう何も残っていないはずだ」
ラーンの顔は輝いていた。「いや、今回は違う！今日は必ず何か見つかる予感がするんだ！」
イシェは諦めたように肩をすくめた。ラーンの熱意にはいつも感心するし、彼の純粋な熱意に心を打たれることも少なくなかったが、現実を突きつけるのも必要だと思った。
「あの遺跡は危険だって聞いたことがある。罠がいっぱい仕掛けられているらしい」
その言葉にラーンの顔色が少し曇った。「そんなこと言わないでくれよ！僕たちにはテルヘルがいるんだろ？彼女はどんな罠にも対処できるはずだ」
イシェはテルヘルについて考えると、胸が痛んだ。あの女性の目は常に影を宿しており、どこか悲しげな雰囲気を漂わせていた。ヴォルダンへの復讐心は彼女を強くしている一方で、心を閉ざしているようにも見えた。
「準備はいいか？」ラーンの声がイシェを現実世界に戻してくれた。「テルヘルが待っているぞ！」
３人はビレーの街はずれにある遺跡に向かった。遺跡は山腹にひっそりと佇んでおり、崩れた石造りの門が朽ち果てている様子だった。
テルヘルはすでに遺跡の前に立っていた。黒いマントを羽織り、鋭い眼光で周囲を見回していた。彼女はラーンとイシェに近づくと、低い声で言った。「準備はいいか？今日は特に危険な罠がある可能性が高い。慎重に行動しなければならない」
３人は遺跡の中へと足を踏み入れた。薄暗い通路には、苔むした石畳が広がっていた。天井からは鍾乳石が垂れ下がっていて、不気味な影を落としていた。
ラーンは興奮した様子で、遺跡の壁に刻まれた模様を指差して言った。「すごい！こんな彫刻を見たことがないぞ！」
イシェはラーンの肩を軽くたたき、注意を促した。「落ち着けよラーン。罠に引っかかるなよ」
テルヘルは前方を見つめながら、静かに歩いていた。彼女の目は鋭く、周囲の状況を常に把握していた。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。通路の先に広がるのは、広大な地下空間だった。天井から光が差し込み、壁には複雑な模様が刻まれていた。中央には巨大な石柱が立っており、その周りには謎の装置が配置されていた。
ラーンは目を輝かせながら言った。「ここだ！何か見つかる予感がする！」
イシェは不安を感じていた。この空間には何か不吉なものが潜んでいるような気がした。
テルヘルは慎重に装置を調べ始めた。「これは…古代の技術だ。非常に危険だ」
その時、床から突然、鋭い棘が飛び出した。ラーンは間一髪で避けられたが、イシェは足を刺され、悲鳴を上げた。
「イシェ！」ラーンの叫び声が響き渡った。
テルヘルは素早く動き、イシェを安全な場所に運び、棘から逃れるように指示した。