ラーンが遺跡の入口で息を切らして振り返ると、イシェが眉間に皺を寄せていた。「またか？」
「いや、今回は本物だって。」ラーンの言葉には自信がなかった。テルヘルが持ち出した地図は確かに古びていて、奇妙な記号が刻まれていた。だが、イシェの鋭い視線に耐えかねてしまう。「あの…場所を特定するのに、ちょっと時間がかかるかもな。」
「時間はないわ」テルヘルの声が背後から冷たく響いた。「ヴォルダンは動き出してる。この遺跡には何かがあるって情報が入手できたんだ。我々が先に手に入れなければ…」彼女は言葉を濁すように続けた。「彼らが手に入れる前に、ね？」
イシェは小さくため息をつき、ラーンの肩を叩いた。「よし、行くぞ。」
薄暗い通路を進んでいくと、壁には不気味な絵画が描かれていた。まるで生き物のように見える奇妙な彫刻も点在し、ラーンは背筋が寒くなるのを感じた。イシェは細心の注意を払いながら足元を確認する。テルヘルは先頭を歩いて、時折振り返って地図を確認していた。
「ここだ」テルヘルの声が響き渡った。目の前には巨大な扉がそびえ立っていた。扉には複雑な模様が刻まれていて、まるで生きているかのようだった。「この扉を開けるには特別な鍵が必要だ。遺跡の奥深くに隠されているはずだ。」
ラーンは扉に手を当てると、冷たい金属の感触を感じた。「鍵を見つけたら、すぐに開けろ」テルヘルは言った。「時間がないんだ！」
イシェが何かを耳元で囁くと、ラーンの顔が曇った。「何だって？」テルヘルが鋭く尋ねた。
「あの…壁に小さな穴があるんだけど…」イシェは小声で言った。「まるで誰かが盗聴しているように見える。」
ラーンの表情が硬くなった。盗聴…ということは、ヴォルダンの情報網が既にこの遺跡に潜り込んでいるのか？ それとも…別の勢力がいるのか？ 心配と不安が頭の中をよぎった。
「気にすんな」テルヘルは冷たく言った。「我々が先に鍵を見つければ問題ない。さあ、行こう！」