ラーンの肩に手を置いてイシェがため息をついた。「また迷子か?」
「違うんだって!ほら、あの石の模様、見ろよ。さっきと同じだぞ!」ラーンは興奮気味に言ったが、イシェの眉間に皺が寄った。「同じ模様?ラーン、それはただの石ころだよ。」
「違うって!ほら、あの角、尖ってるだろ?あれはきっと何かの印だ!」ラーンの目は輝いていた。イシェは諦めたように肩をすくめた。「わかったわかった。君の言う通りにしよう。でも、もしまた無駄な時間を過ごしたら、次の遺跡探検は俺たちだけでやるぞ。」
テルヘルは静かに地図を広げながら言った。「この遺跡は複雑だ。何かの仕掛けがある可能性が高い。慎重に進もう。」彼女の鋭い視線は、地図に描かれた複雑な通路をたどっていた。ラーンの無茶な行動にはいつもイシェがフォローするが、テルヘルは常に冷静さを保っていることにイシェは安心していた。
深い地下へと続く階段を降りるにつれ、空気が冷たくなった。壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェの背筋にぞっとする感覚が走った。ラーンの足取りは軽快で、まるで遺跡探検を楽しんでいるかのようだった。しかし、イシェはどこか落ち着かない気持ちになっていた。
「おい、イシェ!見てろ!」ラーンの声が響き渡った。イシェが振り返ると、ラーンは壁に刻まれた模様を指さしていた。「これだ!きっと何か意味があるはずだ!」
イシェは近づいてよく見ると、確かに複雑な模様が組み合わさって描かれていた。しかし、イシェには何の意味も分からなかった。「どうするんだ?」イシェが尋ねると、ラーンはにやりと笑った。「触ってみようぜ!」
ラーンの指先が模様に触れた瞬間、壁から低い音が響き渡り、床が激しく振動し始めた。石塵が舞い上がり、視界を遮った。イシェは慌ててラーンの手を掴み、近くの柱に隠れ込んだ。
「何だこれは!?!」ラーンの声が震えていた。
その時、壁の模様が光り始め、壁の一部がゆっくりと沈下していった。そこには階段が現れた。階段の下には深い闇が広がっていた。イシェは冷や汗を流しながら、テルヘルの顔を見た。彼女の表情は硬く、皺が深く刻まれていた。
「これは罠だ。」テルヘルは低い声で言った。「慎重に進もう。」
彼らはゆっくりと階段を降り始めた。未知の場所に足を踏み入れる時、イシェは自分の心臓が激しく鼓動していることに気づいた。そして、この遺跡探検が彼らをどこへ導くのか、不安な予感がした。