「よし、ここだ！」ラーンの声が響き渡る。薄暗い遺跡の奥深く、壁一面に広がる不気味な模様が刻まれていた。「イシェ、お前はあの辺りを調べてくれ！テルヘル、お前はこっちを！」
イシェはため息をつきながら、ラーンに従うように懐中電灯を手に取ると、壁の模様を詳しく観察した。複雑な幾何学模様はまるで生きているかのように、かすかに脈打つようにも見えた。「何か変だな…この模様…」イシェが呟く前に、床に埋め込まれた石版から不気味な音が響き渡った。
「うっ！」ラーンが剣を抜こうとした瞬間、床から緑色の光が噴出し、彼を包み込んだ。光は瞬く間に消滅し、ラーンの姿はそこにはなかった。「ラーン！」イシェの声がこだました。
テルヘルは冷静に周囲を見渡した。「何があったのか？あの光は…」その時、彼女は壁の模様に変化があることに気づいた。模様がゆっくりと動き始め、まるで…呼吸をしているように見えた。そして、その中心から、薄っぺらな皮膜のようなものが伸びてきた。それはまるで生きているかのように脈動し、ゆっくりとラーンを包んでいた石版へと向かっていった。
「ラーン！」イシェが叫びながら、石版に手を伸ばした。しかし、皮膜は彼女の手をすり抜けて石版に接触すると、瞬く間に石版を包み込み、まるで溶かすように飲み込んでしまった。石版は光り輝き、やがて消滅した。
「ラーン…！」イシェの叫びが、遺跡の中に響き渡った。テルヘルは冷静な表情のまま、壁の模様を見つめていた。「皮膜…」彼女は呟いた。「ヴォルダンに伝えなければならない。これは大きな発見だ…」