「おい、イシェ、あの石碑、どう思う?」
ラーンが、埃まみれの石碑を指差した。イシェは眉間に皺を寄せ、石碑に刻まれた不可解な文字列を睨みつけた。
「また見慣れない記号じゃないか。ラーン、本当にここが遺跡だと断言できるのか?いつも『大穴』が見つかるって言うけど、結局何も見つからないんじゃないのか?」
イシェの言葉は皮肉に染まっていた。ラーンの楽観的な態度に何度となく失望を味わってきたのだ。
「大丈夫だ、イシェ。今回は違うぞ。この遺跡には何か感じるものがあるんだ」
ラーンは自信満々に剣を構えた。彼の目は輝き、まるで宝の山を見つけたかのような表情だった。イシェはため息をついた。
「いつも同じこと言うわね」
その時、テルヘルが鋭い声を上げた。
「皆、静かに!何か聞こえないか?」
三人は周囲に耳を澄ました。すると、遠くからかすかな音が聞こえてきた。まるで金属が擦れるような音だ。
「あれは…!」
ラーンの顔色が変わった。それは遺跡の奥深くに眠る秘密を解き明かす鍵になるかもしれない音だった。彼は興奮気味にイシェに言った。
「ほら、イシェ!やっぱり大穴が見つかるって言うだろ!」
イシェは苦笑した。ラーンの無邪気さに翻弄されるのはもう慣れたものだ。しかし、どこかで、今回の遺跡が違った何かを感じている自分に気づき始めた。