ビレーの朝露が乾き始める頃、ラーンはイシェを連れて遺跡へと向かっていた。日当を稼ぐためだ。テルヘルからの依頼はいつもより大規模で、報酬も高額だった。
「今回は違う気がするんだ。何か大きいものが見つかる予感がする」
ラーンの言葉にイシェは苦笑した。「また夢を語っている。大穴は簡単に見つかるものではないでしょう」
しかし、イシェの心にも僅かな期待があった。いつもと違うのは、テルヘルが遺跡の場所を示す地図に加えて、古い文献の一節を渡してきたことだった。その文章には「眠れる巨人の涙」という言葉が記されていた。
遺跡の中はいつもより複雑な構造で、罠も数多く仕掛けられていた。ラーンは勇敢に先陣を切っていたが、イシェの冷静な判断とテルヘルの知識が彼らを何度も危機から救った。やがて彼らは巨大な石室にたどり着いた。
中央には、巨大な水晶球が鎮座していた。その周りには、まるで巨人によって彫られたかのような複雑な模様が刻まれていた。
「これは…!」
テルヘルは目を輝かせながら水晶球に触れると、その表面から淡い光が放たれ始めた。すると、石室の壁一面に広がる模様が動き出し、まるで生き物のように変化していった。
「眠れる巨人の涙…まさか…」
イシェは息を呑んだ。それは、かつてこの地に存在した文明の遺産であり、伝説上の宝「巨人の涙」そのものではないだろうか。
ラーンの興奮を抑えきれない様子を見て、イシェは小さな微笑みを浮かべた。もしかしたら、今回は本当に大穴が見つかるかもしれない。