ラーンの大雑把な指示に従い、イシェが慎重に石版の隙間をこじ開けた。埃っぽい空気が流れ込み、一瞬にして遺跡内の温度が下がった気がした。
「よし、これで開けられるはずだ!」
ラーンが力任せに石版を押し下げると、奥から微かに光が漏れてきた。期待に胸を膨らませながら、三人はその光の方へと進んだ。狭い通路は崩落の危機を感じさせるほど不安定で、イシェは常に周囲を観察しながら慎重に進んだ。
「ここは一体何だ?」
テルヘルが呟いた。通路の奥には広大な空間が広がっていた。天井から伸びる巨大な柱に囲まれたその空間の中央には、まるで植物が地面から発芽するように、複雑に絡み合った金属製の装置があった。
「見たことないものだな」
ラーンは興味津々に装置を指差した。イシェは装置から放たれる微かな光に気を取られながら、テルヘルの顔色を伺った。彼女の目は鋭く、何かを察知しているようだった。
「これは…ヴォルダンが追いかけていたものかもしれない」
テルヘルは静かに呟いた。その言葉にラーンとイシェは同時に息をのんだ。ヴォルダンが何を追いかけているのかは知らなかったが、彼女たちの目的には深く関わっていることは確かだった。
イシェは装置の複雑な構造を分析しようと試みるが、その仕組みは理解できないほど難解だった。まるで自然が生み出したかのような有機的な形状に、イシェは不気味さを感じた。
「何か…発芽しているみたいだ」
ラーンの言葉に、イシェは背筋が凍りつくのを感じた。装置から放たれる光が強くなり、周囲の空気が熱気を帯びてきた。装置の中心部から何かがゆっくりと動き始めた。それはまるで、長い眠りから覚めた植物のように、ゆっくりと大きく、そして力強く発芽していくかのようだった。