「よし、今日はあの崩れかけた塔だな」ラーンが目を輝かせた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せた。「またあの塔？あの辺りは危険だって聞いたぞ。最近、発熱する人が増えているって噂だし」
「そんなの関係ない！大穴が見つかるかもしれないんだから！」ラーンの豪快な笑い声に、イシェはため息をついた。
テルヘルは冷静に地図を広げた。「情報収集によると、塔の最上階にはかつて王家の宝物庫があったという記録がある。だが、その記録は不完全で、正確な場所は不明だ」
「やっぱり大穴か！」ラーンの目はさらに輝きを増した。イシェはテルヘルの言葉に耳を傾けながら、どこか落ち着かない気持ちを抱いていた。最近、街では謎の発熱者が続出しているという噂が絶えなかったからだ。
遺跡へ向かう道中、ラーンはいつものように陽気に歌い、イシェは彼を静かに見守っていた。テルヘルは前方に目を向け、鋭い視線で周囲を警戒していた。彼女の表情はいつも以上に険しく、何かを感じ取っているようだった。
塔の入り口には、奇妙なシンボルが刻まれていた。イシェはそのシンボルを見た瞬間、背筋が寒くなったような気がした。「なんか嫌な予感する…」
「大丈夫だ。俺たちならなんとかなる！」ラーンは気にせず、塔の中へと入っていった。イシェは彼の後を続くが、足取りは重かった。
塔内部は薄暗く、湿った冷気が漂っていた。床には崩れた石が散らばり、天井からは蜘蛛の巣が垂れ下がっている。ラーンは楽しそうに遺跡を探検しながら進んでいくが、イシェは不吉な予感を拭いきれなかった。
彼らは塔の中層に差し掛かった時、突然、激しい熱気が襲い掛かってきた。イシェは思わず顔をしかめた。「熱い…何だこの熱気は…」ラーンの顔も真っ赤になり、額から汗が流れ始めた。
「何かあったのか？」テルヘルが鋭い視線で周囲を警戒しながら尋ねる。その時、塔の奥から不気味な声が響き渡った。それはまるで、苦しんでいる人間の呻き声のようだった。