ラーンの大斧が遺跡の奥深くにある石棺を粉砕した。埃が舞う中、イシェは懐中電灯を照らして棺の中を確認した。「空っぽか…」と呟いた。
「またしてもか!俺の勘が外れたんじゃない」ラーンは肩を落とした。
テルヘルは冷静に周囲を見回すと、「ここはまだ調査が不十分だ。焦るな」と制止する。イシェはテルヘルの言葉に同意するように頷き、石棺の周りを丁寧に調べ始めた。すると、棺の底に小さな金属製の箱があることに気づいた。
「これだ!」イシェが慎重に箱を持ち上げた。中には一枚の古びた地図が入っていた。
「これは…」テルヘルは地図を広げ、目を細めた。「ヴォルダン領土にある遺跡を示しているようだ」
ラーンの顔色が変わった。「おいおい、ヴォルダンってのは俺たちには関係ないだろ?危険すぎるぞ!」
「この地図は重要な情報を持っているかもしれない」テルヘルの目は冷たかった。「我々はそれを手に入れる必要がある。そして、ヴォルダンに復讐を果たすために…」
イシェは地図をちらりと見せた。そこに記された遺跡の名前は、かつてヴォルダンとエンノル連合の間に激戦が繰り広げられた場所だった。そこには、両国にとって大きな意味を持つ強力な遺物があると伝えられていた。
ラーンは渋い顔をした。「俺たちは遺跡探検家だ。戦争に巻き込まれるつもりはない」
「だが、この地図は我々を導く鍵になる。そして、ヴォルダンへの復讐を果たすための道を開くものになる」テルヘルは力強く言った。「お前たちに選択の余地はない」
イシェは地図を握りしめ、ラーンの顔を見た。ラーンの表情は苦悩に満ちていた。しかし、イシェは彼の心の奥底にある熱い炎を感じ取っていた。それは、かつてビレーで共に夢を語ったあの頃の炎だった。
「わかった…」ラーンの声が震えていた。「地図の場所へ行くぞ」
イシェは深く息を吸い、小さく頷いた。そして、三人は危険なヴォルダン領土へと足を踏み入れた。彼らの前に広がるのは、希望と絶望、そして痛み分けの道だった。