「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると、奥深くには未開の遺跡があるらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら、イシェとテルヘルに話しかけた。
イシェは眉間にしわを寄せ、「またそんな不確かな情報に飛びつくのか？ 以前も言ったように、あの塔は危険だぞ。崩落の可能性もあるし、何よりも…」
「何よりも？」ラーンが首をかしげる。
イシェはため息をつき、「あの辺りはかつて疫病が流行った地域なんだ。今は落ち着いているとはいえ、古い遺物に触れると何か起こるかもしれない」
テルヘルは鋭い視線でイシェを見据え、「臆病者だな。危険と隣り合わせの人生こそが面白いではないか？それに、あの塔には必ず何かがあるはずだ。私は確信している」
ラーンの顔に興奮の色が浮かぶ。「そうだ！ 今回は大穴を掘り当ててやるぞ！」
テルヘルは微笑みを浮かべて「そうしよう。私はそのために君たちを雇ったのだ」と告げた。
3人はビレーを出発し、崩れかけた塔へと向かった。日が暮れる頃、ついに塔の入り口に到着した。
ラーンは剣を手に取り、「よし、行くぞ！」と叫んで塔へと足を踏み入れた。イシェは後ろから「待て！ 気をつけろ！」と叫んだが、彼の言葉は風に乗ってどこかへ消えていった。
塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れかけた壁には苔が生えており、不気味な影を落としていた。ラーンは興奮して塔の中を進んでいくが、イシェは足取りが重かった。彼の背中に冷たい汗が流れ落ちているのが感じた。
「何か変だ…」イシェは呟きながら、塔の中に潜む奇妙な不気味さに気づいていた。彼はかつて流行した疫病のことを思い出し、不安が募っていった。
一方、テルヘルは冷静に周囲を見回し、何かを探しているようだった。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、別のものにある。
3人は塔の奥深くへと進んでいくにつれて、不気味な雰囲気が一層強くなっていく。そしてついに、彼らは塔の中心部にたどり着いた。そこには、巨大な石棺が置かれていた。
ラーンは興奮して石棺に近づき、「これは！」と叫んだ。しかし、その瞬間、石棺から黒い煙が噴き出した。煙の中に潜む何かが彼らを襲い始めた。
イシェは「逃げろ！」と叫び、ラーンを引っ張って逃げようとした。しかし、ラーンの足がすくんで動かない。彼は恐怖で固まってしまったのだ。
テルヘルは冷静さを保ち、剣を抜きながら煙に向かって立ち向かった。「何だ！ この獣め！」と彼女は叫んだ。
煙の中から現れたのは、奇妙な形をした影だった。それはまるで病原菌のように、目に見えない何かが集合して形作られたように見えた。影はラーンに襲い掛かろうとした。