ラーンの唸り声と金属音だけが、埃っぽい遺跡の静寂を破っていた。イシェは眉間に皺を寄せ、彼を見下ろした。「また無理をしたな。あの巨石、まだ動かないぞ。」
ラーンは肩をすくめ、汗で濡れた前髪を払いのけた。「もう少しだ、もう少しで…!」と息絶え絶えに言った。だが、巨大な石板は budge しなかった。イシェはため息をつき、ラーンの背後から石板の隙間を覗き込んだ。
「諦めろ。無駄だ。」
「いや、あの隙間に何かあるはずなんだよ…!」とラーンは言いながら、再び石板を押し始めた。イシェは彼の執念深い姿を見て、疲弊した心を痛めた。彼らはここ数日、この遺跡に閉じ込められていた。目標の遺物を見つけられず、食料も尽きかけている。
その時、背後から冷たく鋭い声が響いた。「諦めるのはまだ早い。」テルヘルが言った。彼女はラーンの背中に手を置き、力を込めた。石板はわずかに動き出した。ラーンとイシェは息を呑んだ。
「力を合わせろ。」テルヘルの声は力強かった。三人は力を合わせて石板を押した。石板はゆっくりと、重々しく動き始めた。その下に広がる光景に、三人は言葉を失った。そこには、かつての文明の栄華を物語る壮大な部屋が広がっていた。壁面には複雑な模様が刻まれており、中央には巨大な水晶球が鎮座していた。
しかし、その輝きは既に失われ、水晶球は暗闇に覆われていた。イシェは肩を落とした。「また一つ、希望を失った…」と呟いた。ラーンの顔も曇っていた。テルヘルだけが、水晶球に向かってゆっくりと歩み寄っていった。彼女は何かを見つけたのだ。
「これは…」テルヘルの声が震えた。「ヴォルダンに奪われたもの…。」彼女の瞳には、復讐の炎が燃えていた。