ラーンの肩が痛んだ。重い石板を引きずり出すのはいつもより骨が折れた。イシェの眉間にしわが寄っていたのも、ラーンには見逃せなかった。彼らは、ビレーから少し離れた遺跡に三日がかりでたどり着いた。「ここだ」とテルヘルが言った場所だが、特に何も見つからないまま、日暮れを迎えてしまった。
「今日はこれで終わりにしよう」イシェが言った。ラーンの肩を軽く叩く。いつもならラーンはイシェの言葉に反論する。でも、今回は疲れている。身体だけでなく心も。テルヘルは何かを見つけた様子もなく、険しい顔で記録を書き取っていた。「また明日か」テルヘルが呟いた。その声は疲れた空気に紛れて、ラーンの耳には届きづらかった。
火を起こし、簡易的な食事を摂る。イシェはいつも通り静かに食べ、ラーンは疲れ切った体にも関わらず、焚き火を見つめていた。テルヘルは影のように近くの岩肌に寄りかかり、目を閉じていた。三人は互いに言葉を交わさず、ただ疲労感に包まれていた。
夜が深まり、星が空を覆う。ラーンはイシェの寝息を聞きながら、テルヘルの言葉が頭をよぎった。「ヴォルダンへの復讐」。その言葉にはどんな深い憎しみと苦しみが込められていたのか。ラーンには想像もつかなかった。
翌朝、三人は遺跡へと向かう。今日も疲れは癒えぬまま、彼らは危険な場所へ足を踏み入れる。ラーンの心は、どこか虚ろだった。大穴、財宝、 those were just words to him now. 彼はただ、一歩ずつ、重たい足取りで遺跡の奥深くへと進んでいくだけだった。