「おいラーン、本当にあの遺跡行くのか?」イシェの言葉がラーンの背中に刺さった。ビレーから東へ三日の道のり、かつてヴォルダンとエンノル連合が激突した戦場跡に眠るという遺跡だ。
「いや、でもテルヘルが言うように、あの遺跡には何かあるって話だろ?それに、大穴が見つかるかもな!」ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をついた。「大穴なんて、いつまでそんな夢見てんの?」
テルヘルは冷静に言った。「この遺跡の記録を調べた。ヴォルダンが何らかの理由で封じ込めたものがある可能性が高い。それが何なのかはわからないが、価値のあるものだと確信する」彼女の瞳には冷酷な光が宿っていた。
三人はビレーを出発した。荒れ果てた戦場跡を進むにつれ、重苦しい空気に包まれた。イシェはラーンの無謀さに不安を感じながらも、テルヘルの目的は何か?という疑念を抱きつつも、彼女の言葉に導かれるように進んでいった。
遺跡の入り口には崩れた石碑が立っていた。「ここに入るな」と警告するように刻まれている文字をラーンは無視し、剣を抜いて内部へと踏み込んだ。イシェは振り返り、何も言わずに続く。テルヘルは不敵な笑みを浮かべながら、二人に続く。
遺跡内部は漆黒の闇に包まれていた。一歩進むごとに湿った空気が肌にまとわりつく。イシェは不安を隠せない。ラーンは意気揚々と進むが、テルヘルの後ろ姿には何かが隠されているような気がした。
深い闇の中、不気味な光がちらつき始めた。それは遺跡の奥深くから発せられるものだった。
「これは…」イシェは言葉を失った。
ラーンの目は輝きを増していた。「やっぱり大穴だ!」
テルヘルは静かに言った。「いい場所を選んだわ」
イシェは、ラーンの喜びとテルヘルの言葉に恐怖を感じた。一体何が待ち受けているのか?そして、この遺跡の深淵には何があるのか?疑念がイシェの心を蝕んでいった。