ラーンの豪快な笑いが響き渡るビレーの酒場。イシェは眉間にしわを寄せながら、ラーンが持ち上げていた拳をじっと見つめていた。テーブルの上には、テルヘルから受け取ったばかりの地図が広げられていた。
「本当にこれでいいんだろ? あの場所なんて聞いたこともないぞ」
イシェの言葉に、ラーンは自信満々に頷いた。
「大丈夫だって! テルヘルが言うなら間違いないさ。あの遺跡には、とんでもない宝物が眠ってるらしいんだ!」
地図には、ビレーから北へ何日もかかる険しい山脈を越えた先に、小さな赤い印が付けられていた。その場所の名前は「失われた王宮」。伝説上の遺跡で、多くの冒険者たちがその財宝を求めて命を落としたという。イシェは地図の赤い印を指さし、不安げに言った。
「でも、あの場所って…本当に危険じゃないのか? 過去の記録には、何者にも見つけられないように強力な罠が仕掛けられているって書いてあったよ」
ラーンの表情は一瞬曇ったが、すぐにいつもの陽気な笑顔に戻った。
「そんなの気にすんな! 俺たちは強いんだから大丈夫だ。それに、テルヘルが言うなら、あの遺跡には俺たちが探してる大穴があるかもしれないんだ!」
イシェはラーンの言葉に納得できなかった。なぜなら、テルヘルの目的はあくまで復讐であり、遺跡を探索する目的はあくまで手段に過ぎないはずだった。果たして、本当に大穴を掘り当てることに興味があるのか? イシェは疑問を抱きつつも、ラーンの熱意に押されるように頷いた。
「わかった。行くことにしよう」
イシェの言葉に、ラーンは大喜びで立ち上がった。
「よし! では、準備だ!」