ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはいつものように眉間にシワを寄せ、彼の肩を軽く叩いた。「また大穴の話か。いつになったら現実的な計画を立てるんだ？」
「イシェ、お前はいつも面白ないぞ。いつか必ず掘り当ててやるからな！その時はお前も一緒に富豪になるんだ！」ラーンの瞳は輝き、イシェの言葉は風に乗ってどこかへ消えていった。
彼らは今日も遺跡に向かっていた。テルヘルが持ち出した情報によると、今回は特に危険な場所だという。イシェは不安を感じながらも、ラーンの後ろをついていくしかなかった。彼の背中はいつも頼りないほどに細く、しかし同時に、どこまでも続くような広がりを持っているように見えた。
遺跡の入り口には、まるで警告のように朽ち果てた石碑が立っていた。テルヘルは地図を広げ、その上に指を置く。「ここに入る前に、一つ確認しておきたい」と彼女は言った。ラーンの顔色が少し曇った。「お前は何を考えているんだ？」
「単なる用心だ」とテルヘルは答えた。しかし、イシェの目は彼女から離れなかった。テルヘルの瞳には、ラーンと自分たちの関係とは別の何かが宿っていた気がした。まるで、彼らを操る糸のようなものがそこに存在するかのようだ。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が肌を刺すように冷たかった。ラーンの剣が光り、イシェの足音だけが響いていた。テルヘルは後ろから二人をじっと見つめていた。彼女の表情は硬く、まるで石像のように動かなかった。
「ここだ」とテルヘルは言った。壁に埋め込まれた奇妙な装置を指さした。「これを起動すれば、遺跡の奥にある宝庫が開かれるはずだ」
イシェは装置を疑いの目で見た。「本当に安全なのか？何か仕掛けがあるんじゃないか？」
「大丈夫だ」とラーンは言い切った。「俺が守るからな！」彼の言葉に励まされたイシェは、装置に手を伸ばした。しかしその時、床から黒い影が湧き上がり、三人を包み込んだ。
「まさか…」イシェの声は恐怖で震えていた。
テルヘルは冷静に剣を抜いた。「計画通りだ」と彼女は呟き、ラーンの方を見た。「お前には感謝する」と言葉を放つと、ラーンの背後から彼を襲った。