ビレーの tavern に漂う煙草の匂いはラーンには心地よかった。イシェは眉間にしわを寄せながら酒を一口飲み干した。
「本当にあの遺跡で何か見つかるのかね?」
ラーンの肩を叩きながらテルヘルが言った。
「大丈夫よ、今回は確信があるのよ。あの遺跡には古代の技術が残されているらしいわ。貴方たちには理解できないかもしれないけど…」
イシェはテルヘルの言葉を遮った。「古代の技術って…何の話だ? また何か危険な話か?」
ラーンの瞳が輝き始めた。「危険なら面白いかもな! どんな危険だろうと、俺たちには負けないぞ!」
イシェはため息をついた。ラーンはいつもこうだった。危険を顧みず、目の前の興奮にばかり囚われてしまう。
遺跡の入り口は、かつての人工的な石造りの門で塞がれていた。門の上には奇妙な模様が刻まれており、イシェにはどこか不気味な印象を与えた。
「この記号…見たことあるような…」
テルヘルが言った。「これは古代ヴォルダン語だ。恐らく警告のメッセージだろう。」
ラーンは全く気にしない様子で、門をこじ開け始めた。すると、門の内側から冷たい風が吹き出し、イシェの背筋がぞっとした。
「何かいる…!」
イシェの叫びを聞きながら、ラーンはすでに遺跡内部に足を踏み入れていた。
遺跡の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。床には何やら不規則な模様が描かれており、まるで巨大な迷路のようだった。ラーンの足取りは軽やかだったが、イシェは恐怖で足がすくんでしまった。
「何だあの光?」
テルヘルが指さした先には、壁に埋め込まれた石の板から、不気味な青い光を放つ球体が浮かんでいた。球体からは脈打のような音が聞こえてきて、イシェの心はさらにざわめき始めた。
ラーンが球体に近づこうとした時、テルヘルが彼を引き戻した。「待て!あれに触れるのは危険だ!」
「何だって?触れちゃダメなんだろ?」
ラーンの好奇心は抑えきれず、彼は球体に手を伸ばそうとした。その時、球体から強烈な光が放たれ、ラーンを包み込んだ。
「ラーーン!」
イシェが叫んだ。しかし、ラーンの姿はすでに消えていた。代わりに、球体の周りを奇妙な黒い影が蠢き始めた。それはまるで生きているかのように、ゆっくりと球体を囲んでいった。
テルヘルは冷静に状況を判断した。「これは…異物だ! 何かを吸収し、変化させている!」
イシェは絶望感に襲われた。ラーンを救う方法はあるのか? そして、この異物は一体何なのか?