ラーンの大剣が遺跡の奥深くへと轟き渡った。崩れかけた石壁を粉砕し、その向こうに広がる空間を照らす火の粉が舞い上がる。イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの背後から「あの暴れるやり方で大丈夫か?」と呟いた。
「大丈夫だ、大丈夫!ほら見て、奥に何かあるぞ!」
ラーンが興奮気味に叫ぶ。確かに、壁の向こうには金色の輝きが見えた。イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろをついていった。遺跡探索はいつもこうだった。ラーンの突進と、それを食い止めるイシェの冷静さ。
「よし、イシェ、お前が Appraisal で確認しろ!」
ラーンが言った。 Appraisal は遺物の価値や危険度を測る魔法だ。イシェは懐から小さな水晶を取り出し、金色の光に当てた。水晶が淡い青色に輝き始めた。
「これは…!」
イシェの声が震えた。「古代ヴォルダン王家の宝飾品… 可能性は低いけど、本物ならとんでもない価値だ…」
ラーンの顔は喜びで真っ赤になった。「やった!ついに大穴を見つけたぞ!」
しかし、その瞬間、背後から冷酷な声が響いた。
「なかなか良いものを見つけたんですね」
ラーンとイシェが振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の瞳は鋭く光り、手には漆黒の短剣が握られていた。
「お前ら…!」
ラーンの顔色が変わった。「テルヘル、何しに来た?」
「この宝飾品を手に入れるためです」
テルヘルの言葉は氷のように冷たかった。「そして、お前たちを利用するのももう終わりだ」