「よし、今回はあの崩れかけた塔だな。イシェ、地図を確認してくれ」ラーンがそう言うと、イシェは小さな巻物を広げて眉間にしわを寄せた。「ここか…。確かに遺跡の記録には載っているが、ヴォルダンとの国境に近い場所だし、危険な場所だと噂されているぞ」
「そんなことより、テルヘルが言ってたように、あの塔には珍しい金属製の遺物があるって話じゃねえか？あれがあれば大金になるだろう！」ラーンの目は光り輝いていた。イシェはため息をつきながら、地図をラーンに返した。「わかった、準備はいいよ。だが、何かあったらすぐに逃げろ」
廃墟の街並みを抜けると、崩れかけた塔がそびえ立っていた。異様な形の石造りの門は、まるで異国の神殿のようだった。テルヘルは少しだけ眉をひそめた。「ここにはヴォルダン人がよく出入りしているという噂だ。気をつけろ」
塔の内部は暗く湿り、埃っぽかった。壁には謎の文字が刻まれ、奇妙な形をした石像が点在していた。ラーンの足取りは軽快だったが、イシェは緊張した表情で周囲を警戒していた。
「ここからは俺たちが先導する」テルヘルがそう言うと、ラーンとイシェを見下ろすように言った。「あの遺物は我々が探しているものだ。お前たちは協力するだけでいい」
ラーンは不快な顔をしたが、テルヘルの鋭い視線に言葉を飲み込んだ。イシェは静かに頷いた。
塔の最上階には、巨大な祭壇があった。その上に置かれていたのは、銀色に輝く金属製の球体だった。「これが噂の遺物か…」ラーンの声が震えた。だが、その時、背後から鋭い剣音が響き渡った。
「待て！」イシェが叫んだが、すでに遅かった。複数の影が彼らを取り囲んでいた。ヴォルダン人の兵士たちだ。彼らは異様な仮面を被り、手には奇妙な武器を持っていた。
ラーンは剣を抜いて立ち向かったが、敵の数は多すぎる。イシェも必死に抵抗するが、圧倒的な力差の前に追い詰められていく。「逃げろ！テルヘル！」ラーンの叫びが響き渡った。
テルヘルは冷静に状況を判断し、影の中に消えていった。ラーンとイシェは絶体絶命のピンチに立たされていた。