ビレーの朝焼けは、赤褐色の岩肌に金色に染まり、ラーンの目を覚ました。イシェが既に準備を終えていた。「今日はあの洞窟へ行くんだろ？」「ああ、テルヘルが言ってたな。何か特殊な石像があるって」ラーンは眠気まみれの顔で言った。イシェは Sigh しながら、「あの洞窟は危険だって聞いたよ。生命力を感じない場所なんだって」と呟いた。
だがラーンの目は輝いていた。「大穴だ！もしかしたら今回は大穴が見つかるかもしれない！」 彼は剣を手に取り、イシェにニヤリと笑いかけた。「さあ、行くぞ！」
テルヘルは洞窟の入り口に立っていた。黒曜石のような瞳が冷たい光を放っていた。「準備はいいか？」と尋ねる彼女の言葉には力強さと同時に、どこか悲しげな響きがあった。ラーンは何も言わずに頷いた。イシェはテルヘルの表情をじっと見つめた。
洞窟の奥深くへと進むにつれて、空気が重く、湿り気を帯びていった。まるで生命力が吸い取られていくような感覚がした。イシェは不吉な予感を拭えなかった。ラーンはそんなイシェの手を掴んで、「大丈夫だ。俺が守る」と力強く言った。彼の言葉に少しだけ安心するイシェ。
やがて彼らは石像のある部屋に到着した。巨大な石像は、まるで生きているかのように脈打つような光を放っていた。「これは…」テルヘルは息を呑んだ。「伝説の生命石だ！」彼女は石像に向かって手を伸ばした。その瞬間、石像から強烈な光が放たれ、洞窟全体を照らし出した。
ラーンとイシェは目を眩ませた。そして、次の瞬間、石像は崩れ落ちた。その下からは、輝く青い結晶が現れた。テルヘルは喜色満面で結晶を手にする。「これでヴォルダンへの復讐を果たせる…」彼女は呟いた。だが、その言葉はどこか虚ろだった。
イシェは結晶をじっと見つめていた。それは確かに強いエネルギーを持っていた。しかし、同時に何かを奪うような、冷たいものを感じた。彼はラーンにそっと言った。「何か変だ…この結晶、生命力を感じない」ラーンの顔色が変わった。「そうか…」彼は深く頷きながら言った。「あの石像は、生命力を吸い取ってたんだ…」
テルヘルは結晶を手にしたまま、何も言わずに立ち去った。ラーンとイシェは互いに顔を合わせた。洞窟の奥深くから、何かが失われたような気がした。