「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!」ラーンの腕が剣を躍らせるように振り上げられ、イシェの眉間にしわが寄った。
「また無茶なことを…あの塔は噂じゃ呪われているんだぞ?」
「呪い?そんなもん気にすんな!俺たちは大穴を見つけるんだぞ、イシェ!それにあの塔には古い文献が眠っているって聞いたんだ。もしかしたら遺跡の場所がわかるかも!」ラーンの瞳は興奮で輝いていた。
イシェはため息をつきながらも、テルヘルの冷たい視線を感じて背筋を伸ばした。彼女の存在はいつも彼らを緊張させ、そしてどこか安心させてくれる不思議な力を持っていた。
「よし、準備はいいか?」テルヘルが鋭い眼光で二人を見据えた。「あの塔には危険な罠が仕掛けられているかもしれない。油断するな。」
崩れかけた石造りの塔。内部は埃と影に覆われ、不気味な静寂が支配していた。ラーンは剣を構え、イシェは慎重に足取りを確かめながら進んだ。テルヘルは後ろから二人を見下ろすように歩みを進めていた。
「ここだ!」ラーンの声が響き渡った。奥の部屋では、石棺が安置されていた。棺の上には複雑な模様が刻まれており、不気味な光を放っている。
「これは…」イシェは息を呑んだ。
「古代語だ。」テルヘルがゆっくりと呟いた。「この文字列…生き血を捧げれば扉が開くという呪文だ。」
ラーンの顔色が変わった。彼は興奮した様子で、剣を棺に突き立てた。「おい、イシェ!この呪文を唱えるぞ!」
「待て!」イシェは必死にラーンを引き止めた。「そんな無茶なことをするな!生き血…何を言っているんだ?」
「大穴を見つけるためには手段を選ばない!」ラーンの目は狂気に満ちていた。
テルヘルは静かに剣を抜き、ラーンの背後からゆっくりと近づいていった。彼女の顔には冷酷な笑みが浮かんでいた。