ラーンが宝剣を手にしたとき、イシェは心臓が凍りつくのを感じた。それは遺跡の奥深く、埃まみれの石棺から発掘されたもので、黒曜石のように光る刃は邪悪なオーラを放っていた。ラーンの顔は興奮で輝き、彼は剣を軽々と振り回す。
「イシェ、見てくれ!これで俺たちは金持ちだ!」
彼の言葉に反して、イシェの胸には不安が広がっていく。「あの剣...何か変だ」と呟いた彼女の言葉を、ラーンは聞き流した。彼はすでに宝剣の輝きに心を奪われていた。
テルヘルは冷静に剣を鑑定し、その歴史を調べ始めた。彼女はかつてヴォルダンで見た書物の中に、類似の武器についての記述を見つけたことを思い出していた。それは強力な魔力を秘めた武器であり、同時に、その力を操る者をも破滅へと導く危険な存在だった。
「この剣は...」テルヘルは言葉を詰まらせた。彼女の視線はラーンの狂喜に満ちた表情から、彼を蝕む影へと移っていった。
ラーンは剣を振るい続け、その鋭い刃が空気を切り裂くたびに、彼の瞳は獣のように predatory に輝いていった。イシェは彼の姿を見て、かつて見たビレーの瓦礫の山々を思い出した。かつて栄えた街が、戦乱によって瓦解し、人々の笑顔だけが消え去った光景が脳裏に蘇る。
「ラーン、その剣を...」イシェの声は震えていた。「その剣は危険だ!」
しかしラーンの耳には届かなかった。彼はすでに剣に支配され始めていたのだ。その力は彼を蝕み、彼の心から人間らしさを奪い去ろうとしていた。