ラーンの豪快な笑い声がビレーの街角にこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩を軽く叩いた。「もう少し静かにしろよ、ラーン。あちこちから不機嫌そうな視線を感じるぞ」
ラーンは少しだけ声を抑えたが、満面の笑みは崩れなかった。「気にすんなって!今日は大穴が見つかる予感がするんだ!」
イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。彼女はいつものように冷静沈着で、周囲の雑音を遮断するかのように静かに地図を広げていた。彼女の瞳は鋭く、地図の細かなラインをくまなく追っていた。「今日の遺跡は複雑な構造らしい。特に注意すべき点は?」
「地下水路が複数存在するようだ。浸水のリスクが高い可能性がある」テルヘルは地図に指を置くと、冷静に説明した。「また、この遺跡には過去の探索隊の記録がない。未知の危険が存在する可能性もある」
ラーンの顔色が少し曇った。「そんなこと言われてもなぁ…」
イシェはラーンを睨みつけた。「だから言っただろう、計画性のない行動は危険だと言っただろう!」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるだろ?彼女が言うように注意すればなんとかなるさ」ラーンの言葉は自信に満ちていたが、イシェの不安は消えなかった。彼女はテルヘルの言葉をよく理解していた。彼女の冷静さと洞察力は頼りになるものの、その裏には深い傷と憎しみが渦巻いていることも知っていた。そして、その憎しみは彼らを危険な場所に導く可能性もあると感じていた。
「よし、準備はいいか?」テルヘルが立ち上がった。彼女の目は氷のように冷たかった。「遺跡の中は誰にもわからない。理解を深めるためには、自ら足を踏み入れる必要がある」