「よし、今日はあの崩れかけの塔だな!」ラーンが拳を握りしめた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら彼の計画を眺めていた。
「またしても無計画な…」と呟く前に、ラーンの視線がテルヘルに向き、言葉が途絶えた。「今日の報酬は?」
テルヘルは薄ら笑いを浮かべ、一袋の金貨をテーブルに置いた。「いつもの金額だ。ただし、今回はより深い場所まで探索する必要があるだろう。危険度は増すことを覚悟しなければならない。」
ラーンの表情は一瞬曇ったが、すぐにいつもの自信に満ちた笑顔を取り戻した。「わかってるよ!大穴が見つかるかもしれないんだろ?イシェもワクワクしてるだろ?」
イシェはため息をつきながら頷いた。「…わかった。準備をしたらすぐに出発しよう。」
崩れかけた塔の内部は、日差しが届かず、不気味な静けさに包まれていた。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは慎重に足元を確認しながら進んでいた。テルヘルは二人よりも後方で、鋭い視線で周囲を観察していた。
「ここからは危険だ。慎重に」とテルヘルが警告した時、ラーンはすでに崩れた石畳の上を駆け上がっていた。「待て、ラーン!」イシェの叫びが塔内にこだました。だが、ラーンの姿は既に視界から消えていた。
イシェは不安を募らせながら、テルヘルと二人でラーンの後を追った。狭い通路を抜けると、巨大な石の間にある広間が現れた。天井からは光が差し込み、埃舞う空間を照らしていた。中央には、古代の文字が刻まれた祭壇がそびえ立っていた。
「ここか…」テルヘルは祭壇に近づき、その表面を慎重に撫でた。「ついに辿り着いた…」
ラーンの姿はなく、イシェは恐怖と期待の間で揺れ動いていた。テルヘルは祭壇の文字を解読し始めた。「これは…予言だ。この場所から、真の力を解放できる…」
その時、床が激しく振動し始めた。壁から石が崩れ落ち、天井から塵埃が降り注いだ。ラーンの叫び声が遠くから聞こえた。
イシェは恐怖に襲われたが、理性的な判断を優先した。「何事だ?テルヘル、これは…」
テルヘルは祭壇に手を押し当て、目を閉じながら言った。「予言通り…この遺跡の力を解放してしまったようだ…」
崩れ落ちる塔の中で、イシェは理性と恐怖の間で揺れ動き、ラーンの安否を案じつつ、テルヘルの言葉の意味を理解しようと必死に思考を働かせた。