「よし、今日はあの崩れかけた塔だな」
ラーンがそう言うと、イシェはため息をついた。
「また遺跡? いつもより危険な場所じゃないか?」
「大丈夫だぞ、イシェ! 大穴があるかもしれないんだ!」
ラーンの瞳に光る期待感に、イシェは苦笑した。ラーンの大穴信仰は相変わらずだった。
「大穴なんて見つからないってば…」
イシェが呟くと、後ろから冷たげな声が聞こえた。
「大穴など幻想だ。現実を見ろ」
それはテルヘルだった。彼女は鋭い視線でラーンを睨みつけ、その後ろに続くようにイシェを見下ろした。
「今回はあの塔の地下にあると噂される王家の墓を目指す。貴方たちには、その墓を守る古代の罠を解除する任務を与える」
ラーンの顔色が曇った。「墓か… つまらないな」
「つまらない? 王家の墓に眠る財宝を知らないのか?」
テルヘルの言葉に、イシェは少し興奮した。王家の墓ということは、王制時代の遺産が眠っている可能性があるということだ。もしかしたら、そこにはラーンが夢見る大穴以上のものがあるかもしれない。
「よし、行こう! イシェ!」
ラーンの表情は一変し、目を輝かせていた。イシェも、いつの間にか彼の熱気に巻き込まれてしまっていた。テルヘルの冷たげな命令と裏腹に、三人は遺跡へと向かい始めた。 崩れかけた塔の内部は暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元には危険な罠が仕掛けられており、一歩間違えば命を落とす可能性もあった。だが、ラーンの豪快な剣さばきとイシェの冷静な判断、そしてテルヘルの鋭い洞察力で、彼らは慎重に塔の奥へと進んでいった。
やがて、彼らは塔の最下層にある広間へとたどり着いた。そこは王家の墓だった。壁には精巧な彫刻が施され、中央には巨大な石棺が置かれていた。その周りには、古代の兵士たちの亡霊たちが徘徊していた。