ラーンがいつものように遺跡の入り口前で大げさに伸びをすると、イシェはため息をついた。「また、そんな大穴が見つかるような顔をしているのかい?」
「だって、今回は違う感覚なんだ!ほら、見てごらん、この石畳!」 ラーンが指さす方向には、確かにいつもと異なる模様の石畳が広がっていた。イシェは眉をひそめて近づき、石畳の隙間にある小さな紋様を確かめた。「これは…確かに以前見たことのないものだ。だが、それが大穴につながるとは限らないだろう」
「でも、もしつながったら…」 ラーンの目は輝いていた。「あの噂の王冠が手に入るかもしれないんだぞ!」
イシェはため息をついた。「また王冠か。そんなものはただの伝説じゃないのか?」
その時、背後から声がした。「伝説とは限らないかもしれませんよ」
振り返ると、テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろしていた。「この遺跡には、王冠に関する記述があるという噂を聞いたんです」
ラーンの表情が弾んだ。「そうか!やっぱり本当だったのか!」
イシェはテルヘルの言葉に警戒心を抱いていた。彼女がなぜこの遺跡に興味を持っているのか、まだよく分からなかったのだ。だが、ラーンが興奮しているのを見て、自分も少しだけ期待したくなった。もしかしたら、本当に何か見つかるかもしれない。
「よし、じゃあ早速中へ入ろう!」 ラーンの声が響き渡り、イシェは彼とテルヘルに続いて遺跡へと足を踏み入れた。石畳の上を進むにつれ、空気が重くなり、不気味な静寂が訪れた。イシェは背筋がぞっとした感覚を覚えた。何か、この遺跡には秘密が眠っているように感じたのだ。
そして、その秘密が王冠と深く関係しているのかもしれない…。