「おい、イシェ、今日の稼ぎはどのくらいかな?」ラーンが陽気に尋ねると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「まだ分からないわよ、ラーン。テルヘルが遺跡の調査が終わるまで待たなくちゃ。それに、今回は遺物が見つかる保証もないでしょう」
ラーンの無邪気な笑顔にイシェはため息をついた。彼にはいつもこうだ。大穴を掘り当てて財宝を得るという夢ばかり追いかけて、現実を見ようとしない。
「でも、いつか必ず大穴を見つけるんだ!」とラーンは力強く言った。「あの日、ビレーの老人から聞いた話なんだ。この近くにも、巨大な遺跡があるって」
イシェはそんなラーンの言葉を聞きながら、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。彼には、この街で暮らす人々の苦しみや不安は分からないのだ。貧困と病気、そしてヴォルダンからの脅威。ビレーの人々は毎日、希望を失わずに生きている。
その時、テルヘルが戻ってきた。彼女の表情は硬く、何かを悟ったかのようにイシェを見た。
「遺物が見つかったようです」テルヘルは言った。「しかし、今回は特別な品らしい。ヴォルダンの軍勢が遺跡周辺を警戒しているとの情報も入りました」
ラーンは目を輝かせた。「よし!これで大穴に近づいたぞ!」
だがイシェの心は不安でいっぱいだった。ヴォルダンとは何か関係があるのだろうか?そして、この遺跡から見つけられる遺物は、本当に希望をもたらすのか?
テルヘルは静かに言った。「この遺物の価値を知る者は、ビレーの人々に献金を行うと言っている。その目的は不明だが…」
イシェの視線は、ラーンとテルヘルの顔に向き合った。彼らの表情には、それぞれ異なる欲望が宿っていた。